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「和人君〜!!!奈々さん、ちょっとどういうことですかっ!?待ちなさい!ちょっと!!」
廊下の奥から、そんな事を叫ぶ若い女性教師の声が聞こえてくる。私のクラスの、担任だ。
「おっ、やってる、やってる。」
「今日暴露するって言ってたもんねー、ナナたち。」
私とリョウは、そんなことをのんきに話ながら、二人並んで放課後の廊下を歩いていく。
季節は12月。今日はクリスマスイブで、学校の終業式があった。
今日から、冬休みだ。このあと、リョウとは放課後デート。街へ行って、買い物したりして、遊ぶ予定だ。
あれからさらに一ヶ月。
ミワとも、前のように仲の良い友達同士になった。ミワとカナ、二人とも、何事もなかったように接していて、相変わらず、ミワっぽさを大活躍させている。
タクは、一ヶ月前の私がミワと屋上で話しているときに、リョウが、『いい加減にしろよお前。』と半ば脅し気味にタクに言ってくれたらしく、何も言ってこなくなった。カズから聞いた話なのだが・・・、カズもその現場にいて、そのときのリョウ、かーなーり、本当にかーなーり、恐かったらしい。おかげで(?)毎日来ていたメールも途絶え、クラスでは、義務以外のことは話さない。それはそれで、告白される前よりは辛い部分があったが、アピールしまくってきたころよりはまだマシだ。
まぁ・・・実言うとアピールされるのもいい気分だったが。
そして、速報。学校全体が、変わり始めている。
前川先生から、昨日聞いた情報なのだが・・・。前川先生の努力もあって、ほとんどの先生が反対していた中学生の男女交際について、だんだんと先生たちの考え方が柔らかくなってきているらしい。
その柔らかくなった理由が、なんでも私たちのことを見ていて、だそうだ。
新学期からやたらごたごたしていたが、私とリョウはお互い励まし合いながら、時には一緒に勉強したりと、すごく勉強をがんばってきた。努力が報われ、私たちの成績はだんだんと上がっていった。今となっては学年トップを二人とも維持している。
それと、学園祭の学年代表を二人でやったのも、効いたかもしれない。私の提案でリョウと話し合い、立候補で学年代表をすることにし、先生たちは始め学年代表に立候補した私たちを怪訝そうな目で見ていたが、私たちの働きっぷりと(かなりがんばった!)学園祭が成功したことによって、認めてもらえたような気がする。新学期からよくはなかった先生の風当たりも、心なしかよくなったようにも感じる。今年の学園祭は大成功だったと言われていて、まぁ、私たちが特別にどうこうした、というワケではないが、強運の持ち主リョウのおかげか?とにかく例年までではないまでの大成功だった、らしい。
そんなこんなで、私たちは支え合って着々と恋愛禁止条約撤廃計画をこなしていき、担任の先生も認めてくれたみたいだった。(というかあきらめていたのかも。)
でも、昨日の前川先生の話によると、職員会議に私たちの話題が出され、どの先生も口々に、『あの二人はいいコンビですね。』と言っていたらしい。そして改めてちゃんと話し合ったところ、中学生の男女交際に反対する先生は全体の四分の一以下で、ほとんどの先生が、『あの二人を見ていると、これが中学生の恋愛のいいところなのでは、と思えてきた。』などと言っていたらしい。
・・・うれしいかぎりである。この知らせを聞いて、私とリョウは飛び跳ねて喜んだ。
私たちが、学校を変えた。そんなこと言っても、過言じゃないかかもしれない。近頃学校全体カップルも増え始めて、あえて公表して対抗していくカップルも出始めた。
「だーかーらっ!!俺らこれからデートなんで仕事できません!!」
「他の人に頼んでくださーいっ!!先生!!」
ナナとカズが、そう叫びながら私たちのとなりをすり抜け、下駄箱へ向かって猛ダッシュで走っていった。
「あ、リョウとアイ、あとのことよろしくなーっ♪」
前の方で、そんな機嫌のいいカズの声が聞こえてきた。
・・・・えぇ!?
後ろを見ると、早くも遅くもない担任が、どうやらあれが猛ダッシュのようで、こちらへ必死に走ってくる。あと、10メートルほどしかない。
まてよまてよ、このまま私らがのそのそと歩いてたら、私たちが代わりに仕事をやることに・・・。
「んあぁ!?おまえら俺らに足で勝てるとでも思ってんのかよ!?」
「・・・いい心意気じゃん。」
私たちは不敵に笑うと、リョウは私の手を取ってあのときと同じように、『アイ、猛ダッシュ用意。』と言って、走り出した。
ナナとカズを余裕で抜いていくと、リョウは、「まぁがんばってなーっ♪」と振り返り叫び、その大きな大きな手で、私を引っ張っていった。
大好きな、その手で。大きくて、厚くて、ごつごつしてるけど、指はすごくきれい。でも、いつだって暖かい、あなたの手。
あなたが握ってくれるのならば、私はどこだって、いつだって、いつまでも、いつまでも、その手に、引っ張られていける。
「リョウ、速いっ!」
「がんばれアイ!お前ならイケる!」
「もぉーっ!」
リョウと私のコートのポケットからはみ出した、おそろいのストラップが、心地よく揺れている。
『LOVE』と『COOL』。どっちも、恋愛には必要なもの。
あのころ、リョウの愛を信じ切ってなかった。
バカみたいだね。今は、こんなにも、愛をいっぱいもらってるのに。
バカップルですが。
本当に本当に、バカップルですが。
私は、リョウのアイを信じていて。
リョウは、私のアイを信じている。
ねぇ、リョウ。
14歳の私たち、最高に、いい14歳だったと思わない?
14 years old 完
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