腕。

背中。

髪の毛。

吐息。

あの夜のことは、私の中に、しみついて抜けない。




love story of friends
          『夜の風、アイツの腕』





『暇〜暇で死にそう』
「あ、そう」


もう、何時間も、アイツとこんな内容のメールをしている。彼氏でもない、好きな奴でもない、アイツと。強いて言うなら何も体の関係を持たなかった、元彼。今はただの仲の良い男友達。受け取り、送り返す文章も2時間ほど前からさして変わらない。お互い句読点なし、絵文字顔文字なんてもちろんなし。くだらないというにはあまりにも言葉が簡単すぎる。”くだらない”というのはまだ内容があるのだ。”くだらない”内容が。でもこの、アイツと四時間以上に渡って交換され続けているメールは、内容すらないのだ。
そんなことを言うなら、早くメールを切り上げてしまえばいい、そう思うだろう、普通なら。お風呂に入るから、もう寝るから、宿題をやるから、・・・メールを切る理由なんて、必要ならば、水と同じように脳の蛇口をひねればいくらでも出てくる。実際、さっきからそんな理由が私の頭の中を暴走族のように音を立てて巡っている。


「あー・・・何言いたいの、コイツ。」


こたつにさも自分の物かのように堂々と潜り込んで、ただただメールを返していた私の口から、思わずそんな言葉がこぼれる。そんな私に、このこたつの真の持ち主、親友のゆりが雑誌を読んでいた目を上げ、怪訝そうに言った。


「・・・そんなこと言うなら、終わらせちゃえばいいじゃない、メール。」


確かにそうだ。そんなこと、自分でもわかっている。重々承知だ。でも、なぜか終わらせたくない。というか何かが終わらせてはくれないのだ。自分からメールの終了を切り出すのも、面倒くさくなっていた。こたつって、人の動力を奪う力があると思う。このままダラダラとメールし続け、アイツからメールの終了を切り出されるか、アイツが寝てしまってメールが返ってこなくなるかまで相手をしようかという思考が浮かんできている。むしろそうしたい。
うっすらと目を開けていた。このまま寝てしまいたかった。明日は日曜日だし、このままゆりの家に泊まっていったって差し支えない。しかし、なぜか眠くならない。今日は一日中塾があって、頭も体も疲れ切っているはずなのに、何かが私の目を覚まさせる。・・・きっと、アイツからのメールのせいだ。
聞き慣れた着うたが流れる。アイツから、メールが返ってきた。


『暇』


・・・。2時間ほどもこの調子。アイツもアイツで、もしかしたら私からメールの終了を切り出すのを待っているのだろうか。しかしアイツがそんなことをするとは思えない。アイツはいつだって自己主張が激しいし、メールを終わらせたかったら嘘をついてでもさっさとメールを終わらせるはずだ。
ゆりならアイツの心理がわかるだろうか、そう心の隅で思ったので、こたつに入ったまま、目線をケータイの画面から外さず呼びかける。


「ねぇ、ゆり。」


そう呼んで返答を待ったが、返ってこない。私の位置からいうと後ろにあるベットに座り雑誌を読んでいるはずのゆり。どうしたんだろう。首だけ回しゆりの姿を確認する。と。

寝てる、コイツ。

・・・どんな図太い神経をしているんだ。親友ではあるが仮にも他人が自分の家の自分の部屋に居座っているというのに、コイツはすやすやとバカみたいに規則正しい寝息を立てて、ぐっすりと眠ってしまっている。さっき会話をしてから数分も経っていないのに。時計を見ると夜の10時すぎ。・・・どこのよい子だ、コイツ。
何回か名前を呼び、起こそうとするが一行に起きる気配はない。疲れていたのだろうか?ゆりの部屋のイメージカラー、黄緑色のシーツに包まれている掛け布団に、それが恋しくて恋しくてたまらないと言わんばかりにしがみつき静かに目を閉じている。
しょうがない。帰ろうかな。友達の家に遊びに来たのに、当の友達が遊び不可能の状態なら意味がない。
あー・・・一人であの家まで帰るのか。やだな、寂しいな。

あ。

そういやアイツ、暇暇言ってたんだから・・・どうせこっちも暇になったんだし。つきあってやってもいいかな・・・・、奴の暇に。
そう、自然に考えてしまっている私がいた。早速その思いをアイツに返す。


「しょうがないな。暇人、つき合ってあげる。ゆりの家まで迎え来てほしいな〜。」


そう返して、15分も経たないころに、アイツからのメールとともに、私の目の前に、アイツもとい外村圭輝はこの寒い12月のまっただ中に、自転車で現れた。



* * *



ケータイのデジタル時計を見ると、10:30すぎだった。
親には、ゆりの家に泊まると言ってある。半分嘘、半分本当。帰るのは、明日の朝だろうか。それまで何をしていよう。まぁ、外村とのプチデートを朝までしているのもいい。それじゃ、プチデートとは言わないが。


「わんこ、お前何時まで大丈夫なんだよ?」


外村が、私のあだなとしてつけたらしい”わんこ”という、私の本名”片山沙希”からはどう考えてもでてこない単語を連発していると思ったら、そんなことを聞いてくる。こんな補導対象になるような時間帯に二人で出掛けておいて、今更何を言う。時間を気にしているのなら、今私はコイツの背中にしがみついてなんかいない。こんな寒い夜に、自転車に二人乗りでふらふらと出歩いている。深夜徘徊もいいところだ。


「ん・・・7時まで。」
「・・・。」
「何。」
「わんこ、それ明らかに朝じゃね?」
「そう言えばそうだけど。」
「・・・俺は3時まで。」


聞いてもいないのに自分の都合を押しつけてくる人は、結構いるものだ。


「なんでそんな中途半端な時間なの。」
「3時からやる番組ビデオに撮んなきゃいけねぇから。」
「ふ〜ん・・・(予約してこいよ。)じゃ、それまで何してる?」


3時まで・・・約、4時間くらいある。4時間なんて、友達と買い物をしてれば簡単に過ぎてしまう時間だが、店もろくに開いていないこの真夜中、しかも男友達の外村とどう過ごせばいいのだろう。まぁ、私は後ろに乗ってるだけだから、ずっとこのままふらふらしててもいいんだけど。寒いということだけが苦しい。


「あー・・・ラブホ行く?」
「蹴るよ。」
「・・・すんません。」


ヘタレなところは相変わらずだった。見た目はヘタレではなさそうなのに、コイツはいつだってヘタレだった。つき合っていた頃に、今日の夜と同じように、夜デートをしたことがあったのだが、手すらつなごうとしなかったし。とんでもなくヘタレだ。仮にホテルへ二人で行ったとしても、何もできずに終わるだろう、コイツの場合。


「そうだ!」


黙っていたら、外村の声が前方から聞こえてくる。寒いのに、どうしてこうエクスクラメーションマークなんてつけられるかな。


「何。」
「いいや、このままふらふらして、俺たちが知ってる友達の家いろいろ見て回ろうぜ。」
「・・・外村がいいならいいけど。」
「いえーい。じゃ、早速2組のあの人の家までGO!」


英語まで出してきた。
寒くないのか。この人。さっきから言っているが、12月の中旬の真夜中。寒くないわけがない。


「・・・寒くないの?」
「ん?寒くないよ、むしろ暑い。」
「おかしいんじゃない?」
「だって俺、5枚くらい着てるもん。」
「え。」
「一番下からぁ〜、薄い長袖の二枚でしょ、それでトレーナー、ジャンパー、コート。」「・・・ありえない。」
「だって寒いじゃん。」


それでも着太りして見えない外村がうらやましかった。もともと奴は細身に小顔のモデル体型で、5枚着こんでも見た目が変ではない。普通におしゃれだったし、とても5枚着ているようには見えなかった。

そんなこんなで始まった夜のプチデート。
波乱を呼ぶ・・・のだろうか。



* * *



そのあと1時間から2時間、学校中の友達の家を見て回った。お宅訪問、というわけではなかったが、べらべらとしゃべりながら、とりあえず自分達の地区をぐるぐるぐるぐると自転車で二人乗りで回る。寒かったが、つまらなくなかったし私は後ろに乗っているだけ故、全然疲れなかった。だからよしとする。
もう行く当てもなくなったころ、またどこへ行こうかという話し合いが行われたが、奴は何を思ったのかここから5キロも離れた市民プール方面へ行こうと言い出した。市民プールの近くには海辺が広がっており、その海を目指して、と言う。まぁ反対する理由もなかったので長い道のりを行き市民プールまで行った。しかし市民プールは当然のように開いていなかったので、市民プール内から海へ行くルートしか海へのルートがわからなかったため、当然海には行けず終いになった。
それでも外村は笑い飛ばして、しょうがねーかー、じゃ帰るかー、と明るくいい、来た道をまた、私を乗せた自転車を走らせた。帰る途中、パトカーに遭遇したり(でもなんとか回避)、補導中のうちの学校の教員に出会ったり(でも外村が猛ダッシュ・・・というよりは猛こぎで逃走)したが、なんとか自分たちの家までたどり着きそうだった。

そんなとき。

あぁ・・・もう、ダメだ。限界。


「寒いっ!!!」


市民プールに着いた時点で、もうすでにかなり寒さを感じていた。首の開いたニットに上着を一枚、それに下は半ズボンだった私は、5枚着こんでいる奴とは対照的にかなり寒さにやられていた。


「寒い寒い寒い寒い寒い寒い・・・!!」


言えば言うほど寒さが増していくような気がした。今もなお風が露出した肌に吹き付けてくる。私は思わず目の前にある外村の背中にぎゅっと抱きつき、頬を押しつけた。細身に見えた奴の背中は、思った以上に広く、硬かった。
そんな私の様子を見て、外村は信号でもないのに自転車を止めた。


「俺逆に暑いし。」


そう言い訳がましく言うと、一番上にきていたコートを手荒に脱ぎ、それとは裏腹に、体をひねり、今脱いだばかりのコートを優しく私の肩に掛けた。コートが、私の頬をかすめる。外村の体温が、そこにまだ残っていた。
不覚にも、一瞬だけ、ほんの一瞬だけ、心臓が違う動きをした。


「あ、ありがと。」
「おうよ。」


ぶかぶかのコートのおかげで、体よりももっと違う、他のどこかが暖まったような気がした。



* * *



私たちの地区に戻った頃、もう時計は2:40を指していた。外村は、もうそろそろ家に帰らないといけない。


「これからどうすんの?」


だからこそ、こんなことを聞いてきたのだ、奴は。相変わらず自転車をこぐ足を止めず。外村は3時からの番組を録画するため3時までに家に帰らないと本人が困る。そして私はというと帰りは明日の朝と伝えてある。7時ごろが賢明だ。これからゆりの家に戻るのもいいが、それもめんどうくさいし、ゆりに迷惑かかるし。


「どうしよっかな・・・。コンビニで時間つぶしてようかな。」
「7時までとか無理でしょ。・・・うち、来る?」
「あー・・・・そうしようかな。」


そのときは何にも考えてなかった。だんだん眠くなってきていたし、判断力があまり働かなくなっていたのかもしれない。
でも、翌々考えてみたら、かなり危ない選択だった。

男友達の家で、朝まで一緒に過ごす。

ヤバイでしょ。そりゃ。



* * * 



外村の家に着くと、外村は自分の部屋の窓から侵入するぞと言い、戸口みたいになっているところの窓から本当に侵入し、もちろん私もそれに倣った。
外村はなぜか帰る家がいくつかある。まぁそこらへんの複雑な事情はよく知らないが、とにかくこの侵入した家は、その中でも本当に”寝る場所”としか使わない、外村の祖父母の家だった。この家は純和風の平屋で面積が広く、外村が寝室として使っている部屋も広めだった。畳にふすまの部屋。当然のように外村の祖父母はもう寝ていて、家の中は静まりかえっている。
室内にいても寒い寒いと言っていた私のことを気遣ってか、外村は掛け布団を三枚とマットレスを一枚出してくれた。私の案でマットレスの上に二枚掛け布団を敷き、もう一枚はかぶって使うことにした。その布団類は全てダブルサイズで、普段シングルサイズよりも小さいベットで寝ている私にとっては、かなり広い寝床だった。
私はその簡易ベットの上にひざを曲げて座り掛け布団をかぶっていて、外村は畳の上に座っていた。それからしばらく何かいろいろしゃべっていたが、部屋の中は暗かったし、私の方がだんだんと眠たくなってきてしまった。
簡易ベットの上に横になると、外村はずるい、と言って騒ぎ出した。


「寝んなよー。」
「だって眠いもん。外村も寝れば。」
「じいちゃん来たらどうすんだよ!」
「知るか。私は眠い。」


目をつむると、たちまち睡魔が襲いかかってくる。5分もしないうちに寝られそう。


「おい、わんこ。おい。」
「んー・・・・。」
「チューするぞ。」
「できるわけないじゃんこのヘタレ。」
「・・・・抱きつくぞ。」
「はいはい、ヘタレ君おやすみ。」
「襲うぞ。」


そのあともずっとチューするぞとかずっと言ってたような気がする。気付いたら、私はもう夢の中にいきそうだった。


「さみぃ〜・・・。」


ぼーっとしていたら、傍らで外村がそうつぶやいた。そして眠い、と続ける。


「寝れば?」
「どこで。」
「入ればいいじゃん、ほら。」


そう言って私は掛け布団をめくり上げる。別にダブルサイズだから体がぴったりくっつくなんてことはないだろうし、何よりも外村はヘタレだから何もされないだろう、それに二人一緒の布団に入ってれば暖かいだろうし。そう思ったから、そういう発言と行動をした。


「えっ!?」
「はぁ?どーすんの?寒いんでしょ?眠たいんでしょ?早くしなよ。」


眠たいし寒いしコンディションは最悪で、機嫌が悪くなっていた。口調が恐くなってる、私。


「え・・・じゃ、失礼しまーす・・・。」


遠慮がちに布団の中に入ってくると、私の方を体ごと向いて寝る。
それからしばらく向かい合って寝てた。距離結構あるし、苦痛じゃなかったから。


「抱きつくよ。」
「ヘタレ君まだあきらめてなかったか。」
「・・・何されても知らねぇぞ。」
「どーせできないくせに見栄張んなよ。」


でも本当にチューされたら困るな、そう飛びそうな意識の中ぼんやりと考えた私は、それまで外村に向けていた体をひねり、今度は外村に背を向けた。
これならまだ大丈夫だろう、と男と一緒の布団の中では根拠のないことで安心しながら。


外村の声が、霧を通して聞いているような感じだった。聞こえているのに聞こえていない。右の耳から入って、左の耳から抜けていく。眠い。午後、古文の授業を受けているとき以上に眠い。
うとうとしていた。もう半分以上は寝ていると思う。朝になれば目が覚めるだろう、もう寝てしまおうと一人考えた。
すぐ隣にいるはずなのに、どこか遠くの方で外村の声が気がした。


「・・・沙希。」


耳元で、外村の声が聞こえた。消えてしまいそうなぐらい、小さな声。


「沙希。」


もう一度、私の名前を呼んだような気がして。

ぐいっ!

お腹に、締め付けられたような痛みが走り、強い力で、外村の方に引き寄せられた。その衝撃で、私の意識は一気に夢の中から戻ってくる。
だが眠気に加え、さしてよくもない私の脳の機能が、その一瞬で働くわけもなく。
焦りながらも、急いで状況を確認する。
お腹に、引っ張られるような強い力がかかっていて。
耳にかかる、おそらく外村の、吐息。
それを感じたらすぐ、肩に何かがあたる。

・・・え?
ちょっと待って。
これ、もしかして、もしかすると。

――――――抱きしめられてる・・・?

私のうしろにいた外村が、背中から私を抱きしめているようだ。
ちゃんと確認してみると、案外強い力で抱きしめられていて。
奴の細い腕のどこにこんな力が出せる筋肉がついているのだろう。
私の肩におでこをあてて顔をうずめているようで、首筋に外村の髪が当たって、くすぐったい。
一人でどうしよう、と焦っているとさっきよりも強い力で、もう一度強く抱きしめられた。

どうしよう・・・どうしよう。

手が震えてきた。だんだんと伝わってくる奴の体温がやけにリアルで。抱きしめられているという現実を突きつけてくる。鼓動が速く、大きくなっていくのがわかった。そんなに波打っていたら、外村にも、聞こえてしまうのではないか。
私の体をすっぽり包む胸板。こいつ、こんなにでかい体してたっけ・・・。細くて華奢に見えたけど、やっぱり男の子なんだ、私より断然背中は広い。抱きしめる腕もやけにがっちりと感じる。肩先にあてられた手は、指が長くてとても大きくて。

コイツ、男の子なんだ。

抱きしめられて改めて実感した私は、おかしいのだろうか。

っていうか。
本当に、どうすればいいんだ・・・?
このまま寝ているふりをしているのがいいのか。
それとも、笑い飛ばしてしまうのがいいのか。

普段の外村のキャラから考えると、後者がいいのだろう。
いつもなら、私と外村は、ふざけて笑いあっているような仲だから。

でも、なんか雰囲気が・・・ヤバイ気がする、今。
ついさっきまで私のことを”わんこ”と呼んでいたのに、今さっき外村は、私のことを”沙希”と下の名前で呼んだ。
奴の中で何が動き出しているんだ。

一人で自分の思考、そして外村の行動と奮闘していた。
すると。


「沙希。」


いきなり、耳元で外村の声がした。低く、大人っぽい上に、男っぽい声が。
突然のことであったし、そのときの私は混乱していたので、その声に必要以上に驚いてしまった。
びくっと、肩が浮いてしまった気がする。
混乱と焦りで、あまり状況が理解できない。
でも、もし今さっき、肩を浮かせてしまっていたのなら、起きていることが外村にばれてしまう、ということだけは明確に理解していて。
やばい、とどうしよう、という感情が、頭の中をぐるぐる回っている。


「・・・起きてんじゃん。」


外村はあきれたように言った。
やっぱり肩が浮いてしまっていたようだ。ばれている。


「・・・沙希。」


腕は、そのまま私のお腹に巻き付けていて。
顔だって、私の肩先の位置のまま。
奴の胸板だって、私の背中にぴったりとつけたまま。


「・・・はい・・。」
「俺が、今から何しようとしてるかわかる?」



* * *



革命だ。
いや、これは誰がなんと言ったって、革命だ、奴の。




鈍くても響く、聞き慣れた音が、耳元でした。そでと同時にかすかな微動も布団を伝わってほほをかすめる。
目うっすらと開け、そのままその視線を音の方向へと向ける。
音を発していた正体は、マナーモードにしてあった私のケータイだった。

体を少しだけ起こし、ケータイを取ろうとする。
だが、お腹になにか重いものが乗っていて、私の行動を少しだけ制御した。
なんだろう、と思ってまだ完全に目覚めてもいない脳を働かせた。
すぐ、その正体はわかった。

・・・・奴の、腕だ。

それに気付いて、私は一気に目が覚める。・・・ちょっと前も、こんな体験したような気がするな。
でもそのことについて考える時間は今はない。
ケータイが、今もなお震え続けているから。

ディスプレイを見ると、ゆりからの着信だった。
ついでに画面右上のデジタル時計も見る・・・朝の、7時。


「・・・あ゙ぃ・・・。」
「あ、寝てた?おはよ。昨日ごめん、眠たかった。」
「いいにょ・・・。」

「ぷっ・・・『にょ』って。」


肩が浮く。
だって、ゆりの声じゃなくって、外村の声が、真後ろからしたから。
なんだよ・・・起きてたのかよ・・・。

首だけ後ろに回すと、ケラケラと外村が笑っていた。
外村に向かって、しー、と、口の前に人差し指を立てる。


「??沙希?今男の声しなかった?」
「え?あ?えー、気のせい、気のせい。」
「・・・まぁあんたが誰とヤろうがかまわないけど。」
「そんなんじゃn・・・。」
「まぁ、いいや、生きてるなら。じゃーね。」


ゆりは、一方的に電話を切った。
やべ・・・ゆりにはお見通しだ。ゆりって、どんな隠し事をしてても何かとばれるんだよな。そのうち言わないと、あとが怖い。


「おはよー、姫。」
「・・・おはよー・・・ございます・・・。」



* * *



革命だ。

ヘタレは突然治るものなのだろうか。

それとも、あいつの中で、革命が起きたのだろうか。

いや、あの日は、革命が起きたんだ。
夜の、風のせいだと思う。
あいつの、腕のせいだと思う。




「沙希。」
「は?」
「する?」
「・・・しない。」


あれからあいつは、私のことを下の名前で呼ぶようになった。


革命だ。







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*あとがき*
ラブ友第四段です。
ラブ友ですがちょっと展開変えてます。











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