10,
走って、走って。
タクたちを振り切って。
昼食を食べたあの、ファーストフード店で休憩していた。あまり目立つ店ではなかったので、隠れるにはうってつけの店。
リョウの提案で、リョウと私は二人とも、ケータイの電源を切った。こんなことしてると、なんか、駆け落ちしてるみたいだ。
あのあと事情を聞いたら、女子が部屋からいなくなったあと、男子たちも作戦会議らしきものをして、私たちがしたような会話に男子もなったらしい。それで、もともと男子たちは私に気があったわけだから・・・リョウも当然、私のことや、私とのことを聞かれて。
そのあとのことは、もう、そのまんま、私と同じ展開だったらしい。逃げるしかないと思い、そのまま逃げようとしたが、私も連れて逃げないと、私が追いつめられると思って、私を連れて逃げることを決意。私のサブバッグを持って逃げ出したんだそう。
「なんだ、アイも同じ展開だったんだ。」
「うん、サブバッグ、取りに行かなきゃって思いながらも、猛ダッシュ。」
「一方的すぎて、迷惑かけちゃうかもって心配してたんだけど、思い切ったことして逆によかったんだな。」
「本当だよ。怖かったもん、ミワたち。」
「俺もタクがこえーって思ったの、初めてだよ。部屋で二人でしゃべってたことも怒ってるみたいでさ、目がぎらついてた。」
「こっちも、全員キャラ壊れてた・・・。」
二人で、笑い合って。
リョウが、ほっとした様子で、頼んだジュースを口に運びながら言う。
「でも、逆にこっちの方が、よかった。」
「・・・どうして?」
「だって、俺ら、一つもアトラクションのってないじゃん!!」
「あ、そう言えばそうだね。」
「俺、ジェットコースター乗りたい。」
「でも、並んでる途中に見つかったりしない?」
「・・・・そこは心意気でカバー。」
「・・・できんの?」
「・・・・できる。」
くすくすと二人して笑って。店を出て、並んで歩く。
リョウが、持っていたパンフレットを見て、どれ乗りたい、これ乗りたい、と言っていた。
時計の針は、四時半を指していて、もう帰路につく人も多かった。
ここの遊園地は、ディズニーランドのように、夜にイベントがあったりしない。だから、昼間よりは断然園内は空いている。幸運にも、あまり長い時間並ぶことなくアトラクションにはすんなり乗れそうだ。
やっぱりリョウはジェットコースターに乗りたいみたいで、一番始めはジェットコースターに乗ることになった。
でも・・・。
「ねぇ、リョウ。」
「ん?」
「ここのジェットコースター、恐いって有名だよね?」
「そんなことケンが言ってたなー、そういや。おもしろそー。」
「・・・すっごい、恐いらしいよ?」
「楽しそうでいいじゃん。・・・・あ、もしかして、アイ。」
「いや、ジェットコースター嫌いなわけじゃないんだよ?でも、あまりに恐いと・・・。」
「おーっ、アイかわいー。」
「・・・・もーっ。」
ジェットコースターが嫌いなわけじゃない、というのは本当で、正直な気持ちだ。
遊園地に来たら必ず乗るアトラクションであるし、あの他の要素では楽しめない独特なスリル感も好きだった。
でも、パンフレットによると、ここの遊園地のジェットコースターは普通のと違って足がぶらぶらとする吊り下げ式。普通のものは、足下が固定されているので、できる運動に限りがあるが、ここのものは頭の方が固定されているので、逆さまのままぐるぐる回ったりもできるのだ。
乗り場につくと、人気アトラクションなのに悲しくなるぐらい並んでいる人数は少なくて、少し待てばすぐ乗れそうだった。並んで待っている途中、リョウは、
「さー、もうすぐ恐怖のジェットコースターに乗り込みますよ、アイさん。」
とか言って、私をからかってた。そんなに私のことからかっておもしろいですか。
ほんの数分待っていただけなのに、もう私たちが乗る番はまわってきた。不幸中の幸いか、席は七列ある中の四列目。ちょうど真ん中だった。
「あー、俺、一番前がよかったな。」
乗り込むときに、リョウがそうつぶやいた。いや、それは阻止するぞ、本気で。
コースターが走り出す。始めは、スピードはそんな出ていなくて、爽快に走りゆく。そして、カチカチと、頂上めがけて上っていく。この、上っていく時間が本当に嫌。緊張する。
カチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチ・・・・・・・・・。
いやいやいやいや、これ、どこまで上るんだ。
「なんか足ぶらぶらしてると感覚違うなー。」
「恐いー・・・。」
私が静かにつぶやくと。
「ほら。」
リョウは、私に手を差し伸べた。
「握ってる?」
「・・・・うん。」
素直に、リョウの手を握る。あー、内心、こんなことできるんだったら乗ってよかったわ、本当。
「あーっ、おもしろかった。」
リョウが、うれしそうに階段を下りていく。
確かに、スリル満点という言葉では足りないくらいスリル満点で、おもしろかったと思う。が、私はそれ以上に恐怖の方が大きかった。
「おもしろかったけど・・・私、大半目つぶってたよ、恐くて。」
「えー、もったいない。結構高かったから、いい景色だったぜ?」
「うそ!私、高いところから見る景色、好きなんだ。目、あけときゃよかった。」
「・・・・じゃ、もう一回乗る?」
「遠慮しときます。」
リョウが、ケラケラ笑ってる。・・・ったくもー、からかってきたことは、この笑顔で許してやるか。
「大丈夫、ゆっくり景色みれるアトラクション、あるから。」
「え?」
「観覧車。」
「あ、そーじゃん!あとで、乗ってもいい?」
「もちろん。」
そのあと、たくさんのアトラクションに乗った。
コーヒーカップでは、リョウがカップを回しまくって、二人でぎゃーぎゃー騒いで。
ウォーターコースターでは、最前列だったから、二人ともびしょぬれ。
お化け屋敷では、大のホラー苦手な私は、リョウにしがみつきっぱなしで。それとはうってかわって、全然そういうのは平気なリョウは、お化け役の人を逆に驚かせたりして、私を笑わせてくれた。
ふと、何かリョウは気付いたようで。
「アイ、あのときもらった金券ある?」
「うん、あるよ。」
リョウに言われ、ごそごそとサブバックの中を探す。
あった、あった、薄い茶封筒。撮影のお礼にもらった、園内で使える金券二千円分。
はい、とリョウに渡すと、リョウはうれしそうに受け取って、
「せっかくだしさ、なんか記念になるようなもの、買わない?」
「あ、いいね、それ。じゃ、お土産屋行く?」
確か、メインストリートに土産屋があったはず。そちらに向かって、歩いていく。
土産屋につくと、他の人たちもこの時刻はお土産を買いにくるようで、店内はたくさんの人であふれかえっていた。
どれがいいかと、二人で廻って商品を見ていく。すると。
「あっ、アイ!!」
どきーーーーーっっっっっ!!!!
やばっ、今、私呼ばれた!?聞き慣れた声が、後方からした。
リョウと私は、顔を見合わせる。おそるおそる、振り返ると。
「ナナ・・・。」
ナナとカズだった。二人は、こちらに駆けてきた。
リョウは、あっちゃーとでも言うような顔をしていた。どうやら、逃げる気はないらしい。二人とはかなり近距離であったし、店内も混んでいて、逃げても逃げ切れないと考えたのだろう。
「もーっ、心配したんだから。ケータイもつながんないし!」
「ごめん・・・・。」
「ま、アイだけが悪いワケじゃないしね。追いつめた私らの方が悪い。こっちこそ、ごめんね?」
「リョウ、俺らもごめん。」
ナナとカズが、バツ悪そうに謝ってきた。私とリョウも、ごめん、と返す。
「みんな心配してた?」
「ううん、全然。」
「へっ!?」
「あのあと、あいつら足早いから無理ってなって、あのあともカラオケで歌って踊って騒いでた。」
「薄情な・・・。」
「でも私はずっと心配してたんだよ?」
「ごめ〜ん。」
私が、申し訳なさそうに言うと。
「・・・・ごめん、ナナちゃん。俺が勝手にアイ拉致った。」
リョウが、堅い声色で言った。あー、なんとかならないかな、これ。
「えっ!?いやいやいや、私らも悪いし・・・。」
ナナさん、なにほっぺ赤くしちゃってんですか。
「あ、リョウ君・・・今日はいろいろ、ありがとうね。私のバカな元彼のせいで、迷惑かけちゃったみたいで。」
「あー・・・大したことしてないッスよ。」
「とにかく、ありがとね。」
笑顔を向けるナナ。
どうやら、この様子だと、もうあの彼のことはふっきれたみたいだ。ちゃっかり『元彼』って言っていたし。
「で、どうすんの?みんなと今から合流する?」
ナナが、私たちに疑問をなげかける。リョウと私は、アイコンタクト。
リョウの目は、合流なんて無理って顔してた。私もそりゃ賛成だ。この状態で合流なんて、絶対無理だ。
「ごめん、合流しないで、私らは別で帰るよ。」
「まぁ、そりゃ、こんな状態で合流なんてできないよね。」
「ナナにはお見通しか。」
「そうだよ〜。・・・・なにもかも、ね?」
そう言って、ナナは意味深げに、カズと顔を見合わせる。
私たちが不思議そうにしていると、今まで黙って会話を聞いていたカズが、口を開いた。
「つきあってんだろ?お前ら。」
バ レ バ レ。
リョウと、顔を見合わせる。
私が苦笑いすると、リョウは、私の代わりに質問に答えてくれた。リョウも、この際しょうがない、と思ったらしい。
「・・・うん。でも、いつから気付いてた?」
「朝、合流したときに私が感づいて。」
「確信になったのは、二人が逃亡してからだぜ?」
くそー、こいつら、ムカツクぐらいにやついてやがる。リョウは、ただただ苦笑いするばかりで。
今度は私から。
「みんなも、気付いてる?」
「ううん、たぶん、私たちだけ。」
「みんな、鈍めでよかった・・・。」
「でも、気付くのも時間の問題だと思うよ?」
「・・・大丈夫、そのうち全校に知れ渡ることになるから。」
「はぃ?」
「いや、こっちの話。」
・・・・二週間後のオンエアが楽しみだ。
「秘密にしておいてもらえる?このこと。」
「わかった。じゃ、二人は別に帰るのね?私とカズでなんとかうまくいっとくよ、みんなには。」
「本当?」
「あったりまえでしょ、親友のためなら一肌でも二肌でも脱ぐわよ。」
「・・・さーんきゅっ。」
『親友』って言葉が、なんだかすごくくすぐったくて。でも、すごくうれしさがこみ上げてくる言葉だった。
ナナたちと別れようとしたとき、ナナとカズが、リョウに駆け寄って、二人がこそっとなにか耳打ちした。
その言葉を聞いて、リョウは。
「・・・・渡さないし、泣かせないよ。」
そうつぶやいた。笑顔で、ナナとカズは去っていった。
「何言われたの、さっき。」
「んー・・・アイのこと。」
「なんじゃそりゃ。」
「ナナちゃんが、アイを泣かせたら、容赦なく俺をぶん殴るってさ。」
「・・・ははっ、ナナらしい。」
「カズは、タクやケンに奪われんなよ、って。」
「それで、あの返事?」
「うん。」
自然に顔がにやけていくのがわかる。
リョウがそう答えてくれたのもうれしかったけど、カズやナナが、そう言ってくれたのもうれしかった。
気を取り直して、何かいいお土産はないかと、探す。
ぶらぶらとまた歩き出してしばらくすると、店内の一角に、『オリジナル記念ストラップ・ブレスレット』という字を見つけた。
私はその文字が気になって、リョウを誘ってそちらに歩いていく。
そこには、たくさんのストラップやブレスレットのモデルが置いてあって、カウンターテーブルのようになっていて、イスがいくつか置いてある。その向こうに、店員が何人かいた。説明を読んでみると。
『十分ほどで名前やメッセージを入れられます。恋人や友達と記念品としてどうでしょうか?ストラップ、ブレスレットともに千円より。』
とのこと。
「・・・だって。私、これがいいかも。」
「いいね、これにしよっか。」
リョウが、そのコーナーにいた店員さんに話しかける。
「すみません、これ、作りたいんですけど。」
「あ、はい。じゃ、どうぞお座りください。ストラップとブレスレット、どちらにしますか?」
二人でイスをひいて座りながら、どっちがいい?とリョウが聞いてくた。
いや、リョウとおそろいなら、どっちでもかまいませんけど。
ストラップは、長い帯を二つに折り畳んで作る典型的な形。ブレスレットはいつもうざくてしないので、どっちかって言ったら、ストラップの方がいいな・・・。
「私はストラップの方がいいな・・・。」
「あ、そう?俺もそう思ってた。じゃ、ストラップで。」
「はい、色は四色ありますけど、どーしますか?」
店員が、色見本をしめす。
素材はどれもレザーで、黒いもの、茶色いもの、赤っぽいもの、青っぽいものがあった。
う〜ん・・・なんか黒が一番かわいい気がする・・・。
「私黒で。」
「俺も黒がいい。」
「はい、じゃ、お二人とも黒ですね。ストラップの場合、表と裏にそれぞれ名前やメッセージを入れられるんですが、どんな文字をいれるか、この紙に書いてください。入れられるのは筆記体の英語になります。ゆっくり考えていいですよ。」
店員が、二つ枠の書いてある紙と鉛筆をそれぞれ渡す。
話しあって、とりあえず二人とも、自分の名前は入れることになったのだが、裏にいれる文字が思いつかない。
二人で今日の日付だとかいろんな案がでたのだが、なかなかピンとくるものがない。
・・・・あっ、そうだ!
「ねぇ、リョウ。」
「ん?」
「私らの名前って、英語になおせるじゃない?私はアイだから『LOVE』、リョウは『COOL』って感じで。」
「あ、そう言えばそうだな。字は違うけど。いいじゃん、それにする?」
私は典型的に、『愛』という漢字で書かない。『藍』で、リョウは『良』と書く。
まぁ、こちらの漢字でもなおせないことはないのだが、あえて、『愛』と、『涼』に変えてみた。
「お互いの裏に・・・相手の英語入れない?私の裏に『COOL』、リョウの裏に『LOVE』って。」
「いいな。そうしよっか。」
紙に書き込む。結果、私は表に『AI』裏に『COOL』、リョウは表に『RYO』裏に『LOVE』と入れることになった。
「じゃ、これでお作りしますね。十分ぐらいでできあがりますので、できあがったら番号でお呼びします。」
「はーい、じゃお願いします。」
そして、あの時もらった金券を店員に渡す。
タックなどのオプションを何もつけなかったので、千円ちょうどでできた。現金では支払ってないことになる。
それからの十分間、リョウと二人で店内をぶらぶらまわっていて、十分弱たったころに、私たちの番号が呼ばれた。
「どうぞ、こちらになります。それでは、ありがとうございました。」
「どうもー。」
きれいな包みを、リョウがうれしそうに受け取る。
それを、私に渡して、預かってて、と言った。私はそれをサブバックの中に大切に入れた。
14 years old NO.11 へ続く
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