12,
『おっ、ノリいいですね〜!彼氏くん!じゃ、運命の誓いのキスまで、5、4、・・・・・。』
「きゃーーーーーーっ!!!!!」
酒に酔ったキヌヨさんが、年に似合わず、そう叫んで自分の両頬を手で覆う。
『あれ?ほっぺにチューなんて、かわいいですね〜!!』
テレビの中のリポーターが、そう叫ぶ。
あっちゃ〜・・・思ったより、ほっぺにチューされるとき、アップだな。ハズイ。
『・・・と、とってもかわいいラブパフォーマンスをしてくれたこの二人ですが、実は・・・。』
とナレーションが言う。あぁ、中学生ってこと暴露するのか。
そしてリョウと私の2ショットに切り替わって、
『あ、中学二年です。』
というリョウの台詞が聞こえる。くそ、あのテレビ局、ここまでカメラ回してたのか。
そして、そのリョウの発言に、VTRを見ているスタジオの人々が驚く姿が、テレビの右上の小さなモニターから伺える。
次のカップルの紹介に移ると、マスターはカウンターの向こうにあるテレビを消した。
「もぉーっ、やってくれんじゃないっ!リョウ!」
「結構男前でしたな。」
マスターとキヌヨさんは、興奮して、口々に感想を言っていく。
ただ今PM7:49。
グーテン・アーベントには、相変わらずたくさんの客が来ていて、相変わらず私とキヌヨさんはカウンター席に座っている。
あの、みんなで遊びに行った日から、きっかり二週間。先ほどしっかりと、あの映像はO.Aされて、現に、それを見てここで興奮している人が私の隣にいる。
キヌヨさんはカルアミルク片手に、ぽてーっとしていた。
「かっこいいじゃない、リョウって子。」
「あたりまえ。」
「おっ、言うなぁ、アイ〜。」
そう言って、キヌヨさんは私の肩をぱしっと軽くたたく。
マスターは、お客さんにお酒をもっていっているところだ。
一週間前にもここ、グーテン・アーベントを訪れて、マスターとキヌヨさんにはあのみんなで遊んだ日にあったことを順を追って全て話した。
マスターもキヌヨさんも、あの日あったことを、楽しんで聞いてくれたようだ。そして、あの撮影のことを話すと、ここでみんなでみよう、ということになり、店を開けるときは普段テレビをつけていないマスターだけど、今日は特別にテレビのスイッチを入れてくれた。まぁ、マスターも見たい見たいと言って乗り気だったけど。
「でも、アイの話を聞く限り、ベタ惚れっぽくない?リョウ君はアイに。」
「う〜ん・・・そうだといいな。」
「きっとそうよ。しかもかっこよかったし、大人っぽかったし、高校生に間違えられるわな、ありゃ。アイも大人っぽいしさ。」
そこへ、マスターがウエイトから戻ってきて、会話に入る。
「アイさん、本当に水色の水着にしたんですね。似合ってましたぞ。」
「ありがと〜、マスター。あれね、リョウにもほめられたんだ、似合うって。」
「それはよかった。」
「てか、アイ結構胸あんのね。びっくりした。ビキニ本当に似合ってたし。」
「キヌヨさんなんでそう下に走るかな・・・。」
「ありゃリョウもドッキドキするわ、うん。キス三回もしたくなるわ、うん。」
「てか、かなりよくない!?あの展開!!未だに思い出すだけでキュンってするよ〜、私。」
「ノロケんなこの野郎!!」
「あっはは〜。」
マスターは私たちの会話を聞きながら皿を洗って、微笑んでいる。
キヌヨさんは相変わらずカルアミルクの入ったグラスを離さず、頬杖をついて。
「でもよかったね、アイ。」
「なにが?」
「リョウ君歌うまいんでしょ?」
「うん、すっっっごく!!!」
「あ〜・・・すっっっごくうまいんだ?」
「??どーゆうこと?」
私が不思議そうに訪ねると。キヌヨさんは意味深気にふふっと笑って。
「・・・・『歌がヘタ=Hがヘタ』。これ、本当。」
「・・・・・マスター、キヌヨさんって酔うととことん下に走らない?」
「そうかもしれないですね。」
「あ〜、でも、これでみんなにばれちゃうの、やだな。」
「まぁ、確かにね。まぁアイやリョウ自身が、べらべらしゃべんなきゃ、大丈夫よ。」
「そうなの?」
「うん。恋はやっぱり秘め事なんだよ。調子こいて自分の恋を他人にペラペラしゃべるような女は、薄っぺらな恋しかできない。アイ、秘密にしたいって気持ちは大切だよ。」
「でもさ、本当に私でいいのかな、リョウは。なんか自分に自信なくて。」
「大丈夫よ、それの心配は必要ないわ。」
「・・・根拠は?」
「イイ女はブサイクな男とでもつき合うけど、イイ男は決してブサイクとはつき合わないから。」
「・・・・なんかやけに説得力あるね。」
「実体験済み。」
「あれからリョウとは会った?」
「ううん、電話はこの間したけど。」
「よかった。じゃ、次会うときは絶対チューしちゃだめ。」
「えっ!?なんで?」
「さすがに進む速度速過ぎだってば、あんたち。つき合った初日にチューしちゃうとか、ありえないわよ。」
「我慢させろってこと?」
「まあね。体から入った恋愛は長続きしないってよく言うじゃない。」
「えっ!?」
「だから、そうならないための対策。しばらくチューはおあずけ。」
「でも、自分の前だけの笑顔っていうのは、ちょっとクラッてくるわね。すっごい、胸キュン。」
「そうなのそうなの!なんか私以外の人の前じゃ堅くなっちゃっててさ、かーわいいんだよ、もう。」
「それをいかに維持していくかね。自分にしか見せない顔が相手にあるなら、自分もそういう顔をつくってあげる。『二人だけ』っていう事柄を作るのよ。そうすれば、他の女の子に気持ちがいかない。」
私が感心していると、それまで話を聞いていたマスターが、口を開いた。
「とにかく、意地を張らないことが大切ですよ。自分の気持ちを大事にしてください。そうすれば、相手も大切にできますから。」
マスターは、私を諭すように優しく言った。
「マスター、キヌヨさん、ありがとう。おしっ、がんばるね、これから!」
やはり、人生経験が私より多いだけあって二人とも言うことに説得力がある。なんだかとても参考になった。
14 years old NO.13 へ続く
next NOVELtop