13,



「ちょっと〜!!!アイ!!集合!!」


新学期早々、教室に入るなり、ミワに呼ばれる。
あー・・・夏休み中、ずっとケータイの電源落としてたからな。連絡の取りようが無くて、ミワは困ってたわけですね。
ミワのもとに向かうと、そばにはカナとナナもいて、ナナはにやつくのをこらえてた。
ナナとだけは、家の電話で連絡を取り合ったりしてたけど・・・、この様子だと、全て黙っていてくれてるみたいだ。


「おはよー。」
「のんきにおはよう、じゃないわよ!何よ、あの、テレビ!!」


やっぱり、そのことか。


「え?テレビ?何のこと?」
「とぼけんじゃないわよ!ちゃんとわかってるんでしょ?説明しなって!」
「まぁまぁ、ミワ、落ち着いて。」


ナナが、ミワをなだめる。
あっちゃー、そりゃ相当怒ってるな、ミワ。そりゃ、狙おうとしてた男と、自分の友達がつき合ってたんだもんな。
しかも、一緒に遊んだ日に、自分がペア行動しようなんて言ったからあんな撮影が実現してしまい、しかも自分が攻めたせいで逃亡され、キスシーン見てしまった。・・・ん?怒りの矛先、私に向けてるの、おかしくないか?


「勝手に逃げるし、観覧車の中ではチューしてるし、うちらに気付いたら逃げるわ・・・。」


そりゃ、誰だってあの状態は逃げますよ・・・。


「インタビューされて、テレビに出てラブラブっぷりを見せつけるわ・・・。」
「だからなんのことかわかんないってば〜。人違いじゃない?」
「んなわけあるかっ!」


もー・・・はっきり言ってミワに関係ないじゃん。ミワに話す気なんて、さらっさらないんですけど、私。
というか、ミワは自分のこと一切他人にしゃべらないくせに、人のこと聞き出そうなんて、虫が良すぎる。
・・・まぁ、私もそうゆうことときどきやってはいるが。でも、私の場合は相手からしゃべってきてくれるからいいのだ。うん。


「とにかく、アイとリョウ君はつき合ってるわけ?」
「うん。」
「そんな即答しなくても・・・。」
「別に、聞かれたからいっただけじゃん。」
「いつから?」
「あのインタビュー通り。」


専ら嘘。・・・実はあの撮影のとき、まだつきあってませんでしただなんて、言えるわけがない。


「ってことは、始めからリョウ君が来るように仕組んでたわけ?」
「別に・・・リョウが来たのは自然現象。・・・ミワじゃあるまいし・・・(超小声)。」


そのあといろいろ質問をされ、ナナのフォローや私の得意なあいまいな返事のおかげで、なんとかその場はしのげた。
というか・・・さっきから、教室のあちらこちらから視線感じるんだけど・・・。


『あのリョウ君とつきあってるんでしょ?宮森さん。』
『えーっ!私、リョウ君のこと狙ってたのになぁ・・・。』
『テレビであんなことされちゃなぁ・・・。』


『宮森って、おとなしそうな顔してよくやるよな・・・。』
『サッカー部のリョウだって、普段クールで女なんか興味ねぇって感じなのに・・・。』
『あの番組見たか?リョウの顔、普段の顔と全然違ったぜ?やっぱ、女の前では顔変わるんだ。』


そんな声が、あちらこちらから聞こえてくる。
うっせー・・・・。私が誰とつき合おうとリョウが誰とつき合おうと、人の勝手だろ、ほっといてくれ。


「・・・アイ?屋上行かない?」


ナナが、心配した様子で、私の顔をのぞき込む。
ナナにも、もちろん聞こえているはずの、周りの会話。複雑な表情をしている私に、気遣ってくれたのだ。


「うん、ありがとう。行こっか。」


私とナナは、そそくさと教室を出ると、階段を上がって屋上へ出た。
屋上には、誰もいなかった。まぁ、新学期早々、屋上まで上がってくるヤツなんか、私たちぐらいだろう。
空は、真っ青で、雲一つない晴天。新学期には、最適の気候かもしれない。八月が終わったばかりだが、秋特有の涼しさがあった。


「もう、困っちゃうね、教室のみんなは。」


二人で、手すりの上に腕を預けて、ナナは、運動場を見下ろしながら言った。


「まぁ、あんなのに出ちゃったのは私の責任だし、このぐらい、覚悟してたよ。」
「リョウ君、かっこいいから、ファンもいるみたいだしね。しかもあれは反則級だよ、テレビのインタビュー。」
「見たの?」
「うん。びっくりしたよ、何気なく見てたらアイが出てきて・・・。全校に知れ渡るって、こういう事だったのか、ってすぐわかったよ。」
「はは・・・。」


私が力なく笑うと、ナナは、体勢を取り直して、いつもの調子で、話す。


「ねぇ、ミワ、ケンにフられたんだって。」
「へぇ〜・・・って、え!?」
「夏休み中に告白したらしいんだけど・・・『好きな子がいるんだ』って、断られたらしい。」


ナナの言葉を聞いて、私ははっとした。ケンの『好きな子』・・・リョウの話によれば、ケンの好きな子は私・・・。
ナナは、おそらくそのことを知らないから、平然を装って、言わなきゃ。他人事のように。


「・・そっか〜。私に八つ当たりしたくもなるわ。」
「まぁね。私さ、ケンの好きな人、知ってるんだ。予想だけど。」
「へぇ?さすが。」
「アイ、気付いてない?」


さすがのナナ。あの、みんなで遊んだ日のケンの態度や、おそらく私よりは聞いているであろうミワからの話で、勘の鋭いナナは、ケンの好きな人が私だってことに、気付いてしまったのかもしれない。
ナナだったら、別に気付かれても良いけど。


「リョウから、ちらっと聞いたことはあるけど。」
「そっか〜。安心して、ミワやカナには言ってないし、二人も気付いてないから。」
「カナは?タクとどうなったの?」
「変化なし。あれからメールはするようになったけど、相変わらずだって。特別アピールしてくる様子もないし・・・私の予想では、カナはタクのただのストック、って感じ。」
「・・・・。」
「アイ、まさかタクの好きな人、気付いてないとは言わせないよ?」
「うん、それもリョウから聞いてる。」
「二人は気付いてないよ。安心して。」
「ありがとう。あー・・・もう、私何がなんだかわかんない。」
「大変だねー、波乱に満ちてて。」
「・・・そーいうナナの方はどうなの?カズと。」


私がカズ、という名を出すと、ナナは、急にニヤけはじめた。
この間の電話で、メールはよくすると言ってたから、いい感じなのではないか?


「あのね、アイ。」
「うん?」
「つき合うことになりましたっ!」
「おー!!!すっげー!!まじ?いつから?」
「昨日、告白された・・・あはっ。」
「あはっじゃねぇよー!!おめでとう!」


我を忘れて、私は喜んだ。
ナナの顔が、すごく、すごく、うれしそうだったから、こっちまで、うれしくなってくる。
そっか・・・つき合うことになったんだ、二人。お似合いだし、リョウとくっついたらいいねって話してたから、自分のことのように、うれしい。
ナナに、カズにどんな風に告白されたかとか、そういうのを聞いてると。


がしっ!


後ろから、誰かに抱きつかれた。


・・・・えぇーーーー!?


隣を見ると、ナナも、何者かに抱きつかれている。
あ・・・カズじゃん。
なんかすっげーにこにこしながら、ぎゅーっ、ってナナのこと抱きしめてる感じだ。この野郎、なんだか笑顔が無邪気でかわいいぞ。


そして、私に抱きついてるのは・・・


「うぃーっす。」
「リョウ!」


リョウだった。
久しぶりだ、会うの。
リョウが、部活やらなんやで忙しく、夏休みの後半は全然会えなかったのだ。
久しぶりのリョウの匂いに、心がキュンとする。リョウの使っている香水、好きだな。落ち着く。
リョウがそばにいて、カズがこんなことをしているということは、リョウも、カズとナナがつきあうことになったことを、知っているようだ。


「ちょ、ちょっ、カズっ!!」
「おっす。」
「は、はっ、はなし・・・・。」
「ヤなの?」
「・・・ヤじゃないけどっ・・・。」


おー、ナナが赤面してる、かわいいし珍しい。
それに対して、カズは余裕しゃくしゃくって顔をしていて、照れている様子がまんざらない。ヘタレではないそうだが、なんだか、そんな態度がリョウに似ている。・・・リョウ、カズに何か仕込んだな。
ていうか、つき合って24時間も経ってないこの二人、こんなことしちゃってて・・・展開速くないですか?まぁつきあう前から抱きしめちゃったっていう人たちだけある。

・・・私らが言えることじゃないですけど。(←つきあう前からチューしちゃった人)

リョウに抱きつかれたまま、私は首を後ろに曲げ、リョウの顔を見上げて言う。


「なんでここにいるってわかったの?」
「テレパシー。」
「・・・はいはい。」


私があきれていると、依然として赤面しているナナに抱きついたまま、カズが横から入ってきた。


「俺が教室から出ていく二人を見て、リョウ呼びに行ったんだよー。それで、リョウの感で屋上来たら、二人ともいたんだ。」
「そして俺の案で、そっと近づいて抱きつくことにしました。」
「アホ。」
「アホです。」


カズに変なこと仕込むなよ、アホエロ王子。
でも、ちょっとうれしかったりします。暖かいな、リョウの腕。
ちょうど私たちがいるところは、どの校舎からも見えない死角だったからよかったものの、校舎内にいる人たちに丸見えな位置だったらとんでもないことになってた。


「久しぶりのアイだー。」


そう言って、リョウは腕に力を込め、私の肩に顔を埋めてぎゅっと抱きしめる。
頬を、リョウの髪がくすぐる。そう言えば、抱きしめられるのは(後ろからだけど)初めてだ。なのに、緊張しない。懐かしい感じでさえする。
私は、痛いってばー、とか言いながらも、もうちょっと抱きしめていてほしい、と思っていた。


「・・・本当に性格ころっと変わるよなー、リョウって。」


ナナから離れたカズが、リョウを見て、しみじみと言った。


「あ、カズもそう思う?」


私が後ろにいるリョウの胸に寄りかかりながら言うと、カズは、うん、と力強く頷いた。


「本当言われるんだよなー、それ。」
「最近は、俺と居るときとそんな差はなくなってきたけどさ。最近気付いたよ、リョウって結構アホだってこと。」
「失礼だな、俺にアホって言っていいのはアイだけだぞ。」
「うぜぇ・・・。」
「うるせー。」


リョウとの電話でも聞いていたのだが、あの日遊んでから、カズとリョウは急速に仲が良くなり始めたらしい。そのことが、この会話からでも読みとれる。


「・・・ていうか、アイ・・・。」


それまで赤面しっぱなしで黙っていたナナが、口を開いた。


「ん?」
「なんでそんな平気なの?」
「何が?」
「抱きつかれたりして・・・今もまだくっつきっぱなしだし・・・。」


あぁ、なるほど、と私は声をあげる。
確かに、さっきからリョウとくっついたままだ。リョウもいっこうに私の肩先から腕をどかそうとしないし、私も私でこのまんまでいたいと思ってたりするから、成り行きでほっといた感じだ。


「あー・・・慣れ?」
「慣れるほどしてんの?」
「俺だからだよ♪」
「・・・・そーゆうことにしとくわ。」


リョウに話を聞くと、私と話し合っておかなければいけないことがあったらしく、カズに誘われて二つ返事で私たちのことを探しに来たらしい。
カズはなぜリョウを誘ったかというと、クラスの雰囲気にカズも感づき、出ていった私たちのことが心配になったから。全く、優しいヤツである。

リョウが話し合いたい、と言っていたからか、自分たちが二人っきりになりたいからか、カズとナナは屋上から出ていって、私たちを二人きりにさせてくれた。


リョウは私から離れて、さっきまでナナが居た位置、私の隣に移って、二人で手すりに寄りかかりながら話し始める。


「どーしたの?話したいことって。」
「んーと・・・いっぱいあるんだけど、まず始めは、先生に呼び出しされたときのこと。」
「あー・・・絶対誰か見てたよね、先生の中でも。」
「うん。だから、きっと呼び出しされるから、設定としてはどうするか、ってこと。」


私の学校では暗黙の了解で男女交際が禁止になっている。
私立校のようにそこまで徹底しているわけではないが、別れを催促されるという話を聞いた。
確かに、二人別々に呼び出しされたときに、二人が違うことを言っていたら矛盾が生じて信用を失う。まぁ、あんなテレビに出てしまった時点で信用もくそもないが。

「んー・・・私は別にはっきり言ってもいいよ?悪いことしてるワケじゃないし。」
「そうだよなー。だいたい恋愛禁止っておかしいもんな。俺らで流れ変えちゃう?」
「??」
「俺らがきっかけで、学校全体恋愛公認されたら、みんなも俺らもうれしいじゃん?」
「賛成・・・・反抗していきますか。」
「そうしよう。」


私たちがきっかけで、学校全体が柔らかくなったら。なんと素晴らしいことだ、それをリョウと二人でしていくことでさえうれしいのに、みんなに感謝してもらえるだなんて。考えるだけで、ワクワクする。


「じゃ、つき合ってるってこと、堂々と先生に言って、戦ってくのね?」
「うん、ぜってー別れねぇもん、俺ら。見返してやる、あいつらのこと。だいたいさ、今までつき合ってきた奴らが、つきあってから成績さがったりしたから、恋愛禁止になったんだろ?」
「その話はよく聞く。」
「だったら、逆にお互い成績上げってたり、二人でいいことしてけば、先公たちも何もいえねぇだろ。認めざるを得なくなる。」
「そうだね・・・。」


成績をお互い上げていく。どっちが下がっても、現状維持でもダメだ。つきあい始めてから、お互いが少しずつでもいい方に向かっていけば、良い意味でのつきあい、として認めてもらえる。普段勉強なんてしないタチだけど、リョウと一緒にがんばっていくなら、私にもできそうな気がした。リョウと一緒にいられるなら、勉強だって、喜んでやってやる。


「じゃ、呼び出しされたときは、そういうことで、よろしく。」
「はぁーい。」
「で、もう一つ。」
「うん?」
「もうすぐ、タクが告ってくると思うから、思いっきり突き放してやって。」
「えぇ!?」
「あいつさー、俺らがつき合ってること知ってるくせに、俺に『宮森は俺がお前から奪う』とか『お前なんかにまかせられるかよ』とか、めっちゃケンカ売ってくるんだよねー。」
「はは・・・。」


苦笑いしておくしかない・・・こりゃ。あー、タクの本性だんだん見えてきたぞ、結構ねちっこかったりするのか。親友にそういうこと、言うものなのか?いや、親友だからこそ、思っていることは素直に言うべきなのか?どっちにしろ、タクは私とリョウを引き裂きたいワケだ。
不満気なリョウに、自信を持って語りかける。


「大丈夫。」
「ん?」
「私は好きなのは・・・リョウだけだから。」
「ん?聞こえなーい♪」


この野郎・・・小声で言ったのは確かだけど、絶対聞こえてるくせに・・・。
私が照れ屋なこと知ってるのに、わざと照れさせるんだよな、この人。♪とかつけてしゃべっちゃってるし。
リョウが、上機嫌な様子で言う。普段、あまり私は好きとかそういう甘い言葉を言わないから、ときどき言われると、無性にうれしいんだろう、きっと。


「何々?もう一回言って〜聞こえなかったから♪」
「・・・聞こえなかったならいいよ、別に。」


普段いじめられるのでいじめ返してみる。


「えっ!?」


ほらきた、素直なんだよなー、こういうところ。かわいいv。


「まぁ、とにかく私はタクのこと好きになったりしないし、傾いたりもしないよ。」
「わかってる。」
「・・・そういうリョウだって、いっぱい女の子に言われるんじゃないの?そういうこと。」
「アイ以外の女なんて興味ねぇ。」


きっぱりとそう言うリョウに、いつもながら照れてしまった。顔が赤くなるのを感じる。慣れたつもりだったが、やっぱりリョウの言葉は甘い。私の脳と心を満たす。
最近気付いたのだが、私は心が満たされるとにやけてしまうクセがあるらしい。リョウといると、すぐ顔がにやけそうになってしまう。


「ふふっ。」
「??」
「でも、なんで思いっきり突き放すの?普通にフればわかるんじゃない?タク。」
「ううん、アイツは昔からあきらめ悪いから、いつまでも追ってくるよ、アイのこと。たぶん俺じゃなくてアイがいやな思いするから、始めっから気がないなら突き放してやった方があいつのためだし、アイのため。」
「・・・そっか。わかった。」


リョウはなんだかんだ言って、いっつもいっつも、私のことを考えてくれてる。
ナナの元彼浮気事件のときもそうだったし、二人して逃亡したときもそうだったし、今回も、そうだ。
優しいに越したことはないのだが、あまり人に優しくされなれてない私にとっては、その優しさはくすぐったくて、ときに胸に心地よい痛みを与える。最近感じることの多くなった、その痛み。マスター、キヌヨさんからも、ナナからも、カズからも感じる、その痛み。 私も、リョウにそれを与えられてるかな?


「リョウ。」
「んー?」
「好き。」
「・・・知ってる。」


リョウの目を見て久しぶりに言ったその言葉は、私の心にもしみた。





14 years old NO.14 へ続く





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