14 years old
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まず、「リョウ」という人物から説明すると、リョウは一年のとき、つまり去年のクラスメートだった。
今はクラスが違う。
私は入学式の日、初めてクラスメートと対面したときからリョウのことが気になってた。
そして、日をおうごとに、リョウのことが好きになってた。
ある日、リョウは総合学習の授業の班で、なぜかシュークリームを作ることになり、シュークリームを作り慣れていた私は、リョウ達の班員にレシピと作り方を教えた。
レシピを書いた紙には、「わからないことがあったらいつでも連絡してね」と、メアドとケータイ番号も書いておいた。
すると一週間後、一通のメールが来た。
『リョウだけど、明日の予定書き忘れたから教えて』
それが私とリョウのメール交換の始まりだった。
一学期の終わり、私はリョウにメールをした。
成績はどうだったか、という内容だった。
リョウも方も、割とはずんだメールの内容だった。そのあともメールはずっと続いた。
メール一通ごとに、うれしさがつのった。ほかの人とメールをしているときとは違う何かがそこにはあった。
だがある日、リョウからメールが返ってこなくなった。確か夏休み中だったと思う。
新学期、私は思いきってリョウに話しかけた。最近電波の届かないところにいる?、と。
さすがに露骨に、なんでメールを返してこないのか、とは聞けなかった。
明らかに、リョウからメールが返ってこないことが悲しい、と言っているようで、あまりにも私がかわいそうで惨めだったから。
そしてリョウの返答は、別に、という冷たく、私を避けているような言葉だった。
そこで私は悟った。
リョウは、私がリョウに気があることに気付いている、そして、リョウは私に気がない、つまり、あきらめろ、と言っている、ということを。
だから、メールも返してこなくなった。
確かに、クールで、感は鋭そうだった。容姿も整っていて、モテていた。
だから、私はリョウのことが好きになったんだと思う。
そこでリョウをあきらめれば良かったものの、私はあきらめなかった。
いや、正しくはあきらめられなかった。
嫌いになろうと、がんばってリョウのダメなところを探したりもした。
だけど、すべて無駄だった。ダメなところでさえ、愛しさに変わっていった。
その二ヶ月後、もう寒さも近づく、十一月のことだった。
リョウから、メールが来た。
『ちょっと聞きたいことあるんだけど。』
もちろん私はOKと返した。なんだろう、と少し期待していた。
だが、その期待はものの見事にぶちこわされた。
聞きたいこと、と言う内容は、情報網の私に、ある人の情報を教えてくれ、というものだった。
私は気付いた。
こんなの使われただけ、利用されただけだ、と。
メールしてる間は、メールをしてるだけで、すごく幸せだったけど、メールし終わってから、改めて考えてみると、そうだった。
そのメールの後も、リョウからメールは来た。
全く同じ内容だった。
こんな風に利用されているだけなのに、メールをして楽しかった私が、あまりにも惨めだった。
そしてリョウからのメールが途絶えたのは、そのさらに4ヶ月後の、三月下旬のことだった。
私は、リョウにこれ以上私の気持ちを悟られないよう、自分からメールを出すことはやめていた。
しかし、久しぶりに、自分からメールをしてみた。
だけど、メールは、リョウのケータイへは届かなかった。
リョウは、メアドを変えていた。そして、私にはそのメアドを教えてはくれなかった。
リョウにとって私は、「クラスメイト以下」であったことを、私は悟った。
そのままクラス替えの季節となってしまった。
もともとクラスではあまり話をしなかった私たちだけど、それ以上にお互いを避けていた。
いや、私には話しかけたい気持ちがあった。
でも明らかに、リョウのほうは私に、話しかけるな、というオーラを発していた。
完全に私はリョウに嫌われていた。
たぶん、二年でも同じクラスになっても、話しかけることはできなかったと思う。
そういう雰囲気になっていた。私たちの仲は。
私がいくらリョウのことを好きになっても、きっとリョウは私を嫌うばかりであろう、そう悟っていた。
そして、四月下旬の「今日」にまでに至る。
結局リョウとはクラスになってしまった。
運命とはなんて残酷なんだろう、と私はこの二年のクラスを構成した先生と神を恨んだ。
同じクラスだったらまだなんとかなったかもしれない、と小さな希望を抱いていた私は、ひたすら運命を憎んだ。
私は友達といっしょに、いつもブラブラと時間をもてあましているショッピングセンターに来ていた。
そこでは私たちと同様に、ここで時間をもてあましている学校の友達もたくさん来ていた。
いっしょに来てた友達が用事がある、と帰ってしまったので、私はその中の一人、マナと話していた。
マナは、かわいい、と結構校内でも有名な生徒だった。
そして、一番のポイントは、リョウのことが好き、というウワサが流れていて、リョウとメールもしていた。
私はそのことを知っていたから、マナと話したんだけど。
私は思いきって聞いた。
マナってリョウとメールしてんだよね、と。マナは素直にうん、と答えた。
そしてマナは悟ったように言った。
「アイ、リョウのこと、気になってんだ?じゃ、待って、少し探り入れてあげるよ」
私が返事を返さないうちに、マナはもうメールを打ち始めていた。
『リョウ君、私の友達がさ、リョウ君のメアドほしい、って言ってるんだけど、教えてもいい?』
という内容だった。
どう考えても、どう思い返しても、私がマナに、リョウのメアドがほしい、なんて言った覚えはなかった。
内心そう思ってたのは事実だけど。
「ちょっと、マナ、なんでこんなこと聞くの?」
「まぁ、まかせて!!」
こんな状況で、何をあんたにまかせられるか。
だいたい私があんたにまかせられることは何一つない。
そこへリョウからメールが返ってきた。
『別にいいけど、友達、って誰?』
相変わらず、クールな文章だった。私はその文章がとても懐かしく、恋しく思った。
『とりあえずメールしてみてっ!!メアド→ai -love△△・・・・・』
そう言って、いきなり私のメアドをメールで送ってしまった。
マナはいつも行動的で人の了解を得ないのだ。
「ちょっと、メアドなんて送って大丈夫?それに、これでどうやって探りいれるって言うのよ?」
「大丈夫!ちゃんと作戦があるんだから!!」
作戦、って言われても、いきなりこんなことされたって困るんだけど。
そんなことよりも先に、その作戦とやらの内容を教えてほしかった。
そして、二通目のメール。
『やだ。こいつ知ってる。メールすんの、無理。』
・・・・なに、こいつ。
私のメアド、覚えてんの?そんなに、印象に残る、イヤなヤツなワケ?
なるほど、私はこいつの頭ン中のブラックリストにはっきりと、くっきりと、刻み込まれているワケか。
「・・・・マナ、こういうことだったの?」
「いや、まだまだ、わかんないよ?リョウ、そういう理由じゃなくて、違う理由でメールできないのかもよ?」
『はは!!ウソウソ!これは試しただけでぇーす。どんな女の子にも、簡単にメアド教えちゃうのかな?って、リョウ君の軽さを調べてたのっ!!だからこのメアドは私の友達のメアドから適当に選んだの。・・・でもさ、リョウ君、これ、アイのメアドだよね?なんでメールするの無理なの?』
なるほど。けど、私を利用して、明らかに自分をアピールしているような気がするのは、私だけじゃないと思う。
そして、三通目。
『なんとなく。ヤダ。』
頭の上にタライが落ちてきたような気分だった。マナはうっすらとにやけている。
これほどの屈辱を味わったのは、おそらく人生初めてだった。
マナは無言のまま、メールを打ち始めた。
『へ〜、そうなんだぁ?じゃ、告白されたら、どうする?』
今更こんなこと聞いてどうすんのよ?私はそう叫びたかった。
今すぐマナのケータイをへし折って、この場から逃げ出したかった。
そして最後の、一通。
『無理。』
はぁ?って話よね、ほんと。
だいたい何が無理なのか具体的に述べてないのよ、この男。
私とつき合うことが無理なのか、それとも私の存在自体が無理なのか。
とにかくはっきりしているのは、この「無理」という二文字の単語の答えで、私がこの状況から少しは救われるか、地獄のどん底に突き落とされるか、どっちかに決まる、と言うことだった。
どっちが救われて、どっちが地獄のどん底に落とされるか、なんていう答えは、私の口からは言わない。
だってこんなこと、普通の思考回路が備えられている人間には、簡単にわかることだと思うから。
どう、こんなもんなのよ。「今日」の出来事は。
「ねぇ?マスター、どう思う?」
「そんなことがあったのか、としか言いようがないですな。」
その言葉を聞き届けてから、私はアイスコーヒーを一口、口に含んだ。
あの「今日」がすぎて、三ヶ月ほどが過ぎる。
外は、もう熱気に包まれ、私はもうすぐ、長くて短い、などと矛盾だらけのキャッチフレーズを人間たちにつけられた、かわいそうな夏休みを迎えようとしていた。
そして私は今、年期の入ったカウンター席に座っていた。気怠そうに頬杖をついて、カウンターテーブルを信頼しきって、自分のすべてを預けていた。
「まぁ、人生いろいろ。そして、ケーキもいろいろ、ですな。」
そう言ってマスターは、見たことのないケーキが乗った皿を、私が座っていたカウンターテーブルの上に乗せ、どうぞ、と言って私に勧めた。
「ありがとう、マスター。これ、新作?」
「夏に向けて、夏みかんを使ったさっぱりムースケーキ。結構、自信作ですぞ。今のアイさんのお気持ちには、最適なケーキだと思ってね。」
そう言ってマスターはウインクした。
もうどう見ても還暦過ぎだというのに、この茶目っ気は、どこからくるのだろう、といつも不思議になる。
十四歳の私よりも、茶目っ気があるなんて、もしかしたらマスターと私は魂が入れ替わった方がいいのかもしれない。
ケーキを口にほおばると、夏みかんの香りが口いっぱいに広がって、さっきまでの気分とは裏腹に、さわやかな気分になった。
それともなって、おいしい、という一つの感動が、私の体の中に浮かんでくる。
「マスター、このケーキ、すっごいおいしい。こういう味、大好き。」
「それはよかった。気分はよくなりましたか?」
「うん、とても。ありがとう、マスター。」
「こんなのおやすいご用ですよ。コーヒーのおかわりは?」
マスターはいつも気がきく。きっとA型だろう。
立派な口ひげをはやし、頭はハゲていないものの、その見事な白髪には、感動させられるものがあった。
よくテレビドラマで、近所の老人役や、主人公の祖父役とかで出演してたりする、キーパーソン的な、感じのいい老人に似ている。
「いや、飲みたいけど、そろそろ家に帰らないといけないから。今日はありがとう、また、来週には来ると思う。」
コーヒーをもう一杯飲みたい、というのは本当に心の底から思ったことだった。
なんてったってマスターの入れるコーヒー、特にエスプレッソは、私が知っている限りの中では、絶品中の絶品だった。
「それではまたのご来店を心待ちにしております、お客様。」
「うん、じゃ、ごちそうさまでした。」
私はコーヒー代三百八十円を支払い、出入りし慣れたドアを開け、ドアに取り付けられた小さな鐘、というかベルの、チリン、というかわいらしい、心を踊らされる音に見送られ、私は喫茶店「グーテン・モルゲン」をあとにした。
勘定するときに、ケーキ代も支払う、と言ったのだが、サービスですよ、とマスターは支払いを断った。
私がマスターと出会ったのは、あの「今日」の、さらに一ヶ月後のことだった。
二ヶ月前。
私はまだリョウのことが気にかかっていた。
あきらめきれないでいた。
ただ目的もなく、自転車を走らせて、ぼんやりと「今日」のことや、今までの思い出、リョウのことを考えていた。
その日は図書館へ本を借りに行く予定だったが、何を思ったのか突然とてつもなく図書館へは行きたくなくなったのだった。
どんな知らせかは知らないが、たぶん虫の知らせ、というやつだろう。私はこの世で一番虫が嫌いなのだが。
だからぼんやりと自転車を走らせていた。
行くあてもなく、ただただ、さまよっていた。
そうしたらどういうわけか、来たことのない裏通りへ来ていた。
周りにはちっぽけな住宅街があるだけで、本当に知らない町へ来ているかのようだった。
気付けば私は迷子、というものに、生まれて初めてなっていたのだった。
私はそこで、迷子になったときの独特の孤独感を初めて味わった。
だけど、なんだか知らない世界へ逃げ込めてこれた感じもし、ほんの少しだが、折るとパリッと乾いた音のしそうな好奇心も抱いていた。
そのときの私は、少し現実逃避ぎみだったのかもしれない。
私は迷子になってしまったわけだが、あまり焦ってはいなかった。
こうやって自転車を走らせていれば、いつかは自分の知っている通りにでるだろう、と確信していたからだった。
そうやって自転車を走らせてはいたが、ますます知らない通りに出てきてしまったようだった。
周りには、人がいる気配もなかった。
だが、見回してみると、一角だけ、なんだかあやしげな雰囲気を漂わせる場所があった。
私は吸い寄せられるように、その一角へと近づいていった。
「・・・・・グーテン・モルゲン?」
私はめずらしくも独り言を言いながら、よく喫茶店の店先に置いてある、地面に直接立てるタイプの看板を見ていた。
看板には、古いゴシック調のあやしげな装飾がなされていた。
白地に黒いツタの、葉のない枝のような模様に周りをかこまれ、筆記体なのかどうかわからないが、なんとか読みとれる英語らしい文字の上には、これまた不思議な黒い線で描かれたゴシック調の小鳥のマーク。
その看板から読みとれることは、この建物の名前が「グーテン・モルゲン」であること、明らかに怪しげで不思議な世界がただよっていること、そしてどうやら喫茶店であること。
建物は一見、普通の喫茶店らしい感じもし、クリーム色の壁に、喫茶店にはよくありがちな緑色の三角屋根に、割と大きな窓が四つぐらいついていた。
だが、隅々まで見てみると、普通の人間なら近づこうとしないかもしれない。
それがわかるのは、私がさっき見た看板から、そして、その建物に入るための入り口も看板と同様に、白地に黒いツタの枝のような装飾がなされていて、あの鳥のマークもあり、こちらは半立体的だった。
ドアノブは金色で、丸く、少し金メッキがはがれていて、下の灰色っぽい白が見えていた。
冬になると静電気がすごそうで余計入りたくなくなるかもしれない。
白地に黒い模様、という時点で、なにか外国のおまじないの本のような感じがした。
実際その手の本は読んだこと無いが。
とにかくそれらの見た目からして、不思議で、私にはなんとなく引き寄せられる雰囲気を醸し出していた。
私はその店に入りたくてたまらなかった。
私は少し変なのかもしれない。
こんなに怪しげな店に入りたがるなんて。
だけどその入り口の前に立っていれば立っているほど、私はその喫茶店に入りたくてたまらなかった。
私がその喫茶店に入ろうと決めたのは、その入り口の前に立ってから十分もたっていないがそれぐらいたった頃、店の中から薫り高いバターのにおいがしてきたからだった。
そのにおいから、そう言えば昼食を食べていないことに気付いた。私は店に入ることを決心し、自転車をわきにとめ、やっとそのドアノブを右手に取り、ひねりながらドアに体の重心をかけ、店の中にはいった。
「いらっしゃいませ。やっと入ってこられましたね。」
店に入るなりそう声をかけられ、私はびくりと肩を浮かして、返答に困った。
その声の主はカウンター越しにいた。
私がその場に立ちつくしていると、どうぞ、と言われカウンター席に促されたので、私は素直にその席へ座った。
それが私とマスターの出会いだった。
「ご注文は?」
「えっと・・・・何か昼食の変わりになる物もらえますか?」
私がうろたえながらやっとそう言うと、その店の店主らしい人は、少々お待ちくださいませ、と言って、今やっている作業を続けた。
店内に流れるジュー、というおいしそうな音から、何かを焼いているらしい。
店内を見回してみると、割と店内は外観よりも普通の喫茶店、と言う感じだった。
すごく広いとは言えないが、まぁまぁの広さだ。
私が今座っているカウンター席は、私が座っているイスもあわせてイスは六脚あった。
そして店の壁際に設置してあるテーブル席は、あわせて八セットあり、テーブル一つに対し、イスは四脚ある。
テーブルは一区間ごと、仕切りでわけられている。
あまり新しいと言える物ではなく、どれも少し年期の入った物みたいだった。
店の店主がいるカウンターの向こうには、なにかたくさんの装飾品が置かれた棚があり、たくさんの巻紙のようなものや本も、たくさんあった。
そこを除けば、店内は至って普通、と言えるだろう。
装飾品のなかには、店の外の看板と同じようなデザインの箱があった。
その箱にも、やはり黒い線であのゴシック調の小鳥が描かれていた。
それから三分もたたないうちに、私の目の前にすごくおいしそうなふっくらとしたパンケーキがあらわれた。
どうやら私が店に入る前から焼いていたらしい。
きっとマスターは、私が店の前に立っていることを知っていて、そして最後には店に入ってくることを悟っていたのだろう。
「旬のフルーツを使ったパンケーキです。今月は旬のサクランボのソースをかけて、お召し上がりください。」
そう言って店の店主はサクランボのソースが入った器を、パンケーキの皿の横に置いた。
そして、飲み物は、と聞いてきたので、ホットコーヒーを頼んだ。
そのあとすぐにコーヒーも私の手元に届き、私は少しだけ遅い昼食を食べ始めた。
私はそのふっくらと、幸せそうにふくらんだパンケーキをゆっくりと口に入れた。
これが最初で最後かもしれない。パンケーキを食べてこんなに感動したのは。
私が今まで食べたなかでは、一番おいしかった。お腹が空いていたから、とかそういうのはきっと関係ないと思う。
とにかく生地がふわふわとしていて、もうパンケーキ、ということを忘れさせてくれるぐらいのものだった。
サクランボのソースも手作りならではだが、しっかりと果肉も残っていて、サクランボの香りが口いっぱいに広がった。
「・・・おいしい。」
知らず知らずのうちにそんな言葉を自分の口から発していたのは、おそらく初めてだった。
「ありがとうございます。」
店の店主は頭を下げた。
こんなちっぽけな中学生にも頭を下げることができるのか、と、少し不思議だった。
そして、どうして初対面の相手にこんなにも笑顔で話せるのだろう、とも不思議に思った。
だから私は自分から話しかけよう、と思ったのかもしれない。
「あの・・・。」
「マスター、とお呼びください。」
「・・・マスター、この店、いつからやってるの?」
「私が三十路のときでしたから、かれこれ三十年以上たちますな。コーヒーのおかわりは?」
「あ、ください。」
その言葉を口にしてから、私はあわてて空になったコーヒーカップをマスターに手渡した。
マスターは丁寧にそのカップを受け取り、コーヒーを注いで、私にまた丁寧に手渡した。
「まぁ肩の力を抜いてください。」
「は、はぁ・・・。」
私は手渡されたコーヒーをそのまま口に運んだ。
ホットケーキのせいでコーヒーをなんとなく流しながら飲んでいたが、そのとき改めてこのコーヒーがおいしいことに気付いた。
そのまま沈黙が流れ、マスターは私が食べ終わったホットケーキをのせていた皿やなんやを洗っていた。
私はゆっくりと何も考えずにコーヒーを飲んでいた。
その二杯目のコーヒーを飲み終わったら、私は勘定をしてさっさと店をでた。
勘定するときに、しっかりと、この先どうやったら大きな道にでれるか、マスターに聞いた。
マスターは一番の近道、と言って裏道を、丁寧に教えてくれた。
私は最後にマスターに、ありがとう、と一言言って、店のあの奇妙な装飾がなされたドアを開けた。
そんなもんだった。私とマスターの出会いは。かなりそっけなかった。
マスターが教えてくれた裏道は、そこそこ細く、長い、坂道だった。
私はそのとき下り坂として自転車で走った道だったため、かなり快適ではあった。
その道を下っていくと、図書館の前の通りにでた。
なんだ、こんなところにつながっていたのか、と、私は少し関心した。
なにしろ今下ってきた道は、ずっと前から気になっていたが、上り坂だし、細く長かったので、とてもその先に進む勇気はなかった道だったからだ。
あの喫茶店で腹ごしらえをしてきたからかどうかわからないが、気分はいくらかよくなったような気がした。
だからさっきはあんなにも行きたくなかった図書館に、行きたいと思ったのだろう。
そして私は目の前にある図書館に入っていった。
私は小学校五年生ぐらいから図書館に通っている。
この独特な落ち着いた雰囲気が好きであったし、なによりも本を読むことが好きだったからだ。
適当にふらふらと本棚を見て回る。
だが借りたいと思う本が見つからなかったので、しょうがなくなんの手みやげもなしに家に帰ることにした。
帰り道は、とてつもなく不思議な気分だった。
14 years old NO.3 へ続く
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