8、




あのあと、二人で浮き輪に頼って、沖の方でずっと波に揺れていた。
「城」に戻った時には、もうお昼過ぎで、お腹も減っていたので、そろそろ遊園地の方にも遊びに行こうということになった。
私たちは、浮き輪の空気を抜いたり、レジャーセットを売店に返したり、売店の隣に設置されている簡易シャワーでシャワーを浴びたりして、遊園地に行く準備を進めた。

リョウは、海から離れるのをかなり名残惜しんでて、まだいたいのならここにいてもいい、と言ったのだが、遊園地にも行きたいらしく、首を横に振った。

欲張りなのかな、とか思ったりしていた私がいる。

でも、遊園地に行くと決まったら、行動はてきぱきしていて、ちゃんとけじめがついていた。

来た道を戻って、更衣室に向かう。
遊園地内では、海の時ほど荷物はいらないので、一回更衣室のロッカーに荷物を置いてきて、必要最低限のものを持ってくることになった。


更衣室の入り口の前に着くと、リョウはまた、じゃ、またここでね、と、来るときと同じ台詞を言って、別れた。


荷物を入れてあるロッカーへ行き、サブバックの中を整理する。
サブバックの中のケータイを見ると、一件、メールが受信されていた。
メールを見ると、送信者はミワで、内容はと言うと。


『みなさんにお知らせーっ!一回合流しますッ♪そこで、ペア変更するかも。二時に、ゲームセンター前に集合〜。』


・・・ペア変更?


困るっ!


てか、ペア変更なんかしたら、リョウと一緒にいれないし、リョウだって、私以外の女子とは、あの、とげとげリョウ(命名アイ)になっちゃうし。
それに、リョウ以外の男子とまわる気なんて、ない。

そういえば、ミワ、電車の中で、リョウと、『この機会に仲良くなっちゃうかな』とか、言ってた。
もしかして、ペア変更を考えてるのは、リョウと仲良くなるため、リョウとペアになろうとしてる・・・?

させるかっ!

あんな男好きに、純粋な(勝手)リョウを、わたしてたまるか。
ミワのこと、嫌いなわけじゃない。
むしろ、好きだ。
でも、男関係となると、私は、ミワには負けたくない。
男の前ではころっと、見てると、おもしろいぐらい性格が変わる。

女子の前じゃ、至って普通。
性格も、女の子らしいけど、ある程度いいし、人前では、悪口を言わない。
仲の良い友達には言うみたいだが。
実際、私にはすごく愚痴を言ってきてくれる。
それは、私が口が堅いと、信用されているということだから、別にいやではない。
逆に、人の愚痴を聞くことは、私が知らない、他人の性格を知れるチャンスであるし、その人の思想を聞けるチャンスでもあるから、愚痴は、どんどん言ってもらってかまわないと思っている。

それとはうってかわって、男子の前では、ものすんごく、言葉遣い、かわいくなってるし。
仕草とか、女から見てもかなりかわいいし。
天然ボケぶってるし。
ドジっぽいとこみせて、「守ってあげたくなるヤツ」演じてるし。
きっと、今日も、ケンの前で、思いっきり、それらを発揮していることだろう。
それを発揮するも、しないも、個人の勝手であるから、普段は、どうぞ発揮してください、それがあなたの長所ですから、という感じなのだが、好きな男が関わってくると、話は違う。
せっかく、リョウが私のものになりかけていると言うのに、そこで大切な男を、簡単に手放していたら、女が廃る。
私は、これでも、結構負けず嫌いなところがあるのだ。


わたすものか。


そう、決心して、ケータイを閉じる。
そして、更衣室内のシャワーをもう一回浴びて。
備え付けのドライヤーで、髪を乾かし、結っていた髪を、もう一回きれいに結い直して、準備をすませる。

財布、ケータイ、日焼け止めにタオルをバックに入れて、更衣室から出る。
更衣室からでると、リョウは、もうすでに待ち合わせ場所の入り口にいた。
走り寄って、話しかける。


「おまたせ。ケンからメールきてた?」
「うん。二時に合流だってね。あと、一時間半ぐらいあるけど。」
「ご飯食べに行って、それでちょっとアトラクション乗れるかな?」
「乗れるよ、たぶん。じゃ、行こうか?」


二人で歩き出す。
リョウは、入り口でもらったパンフレットを見て、食事のできるとこを探す。
混んでいないところが良さそうだったので、更衣室の一番近くにある、大きなレストランはやめた。
他にも、園内には、食事できるところがたくさんあったので、混んでなさそうな、ファーストフード系の店にすることにした。
その店は現在地からちょっと遠めだが、集合場所のゲームセンターがちょうどそこの近くだったので、気にせずゆっくり歩いていくことにした。


リョウに借りて、パンフレットを見ると、園内には、思ったよりも、たくさんのアトラクションがあって、観覧車はもちろん、コーヒーカップ、ジェットコースターなど、遊園地には定番の乗り物もたくさんあった。
しかし、やはり水着で遊び回って良いところ、水に濡れるおそれのあるアトラクションもたくさんあった。
店に行く途中に、たくさんのアトラクションを見ていって、その間にもリョウは、どれもこれも、乗りたいと言って、うれしそうに騒いでいた。


「リョウ、こういうとこ好き?」
「うん、大好き。ワクワクするし。」
「じゃ、ディズニーランドとかも好きでしょ?」
「もっと好き!ミッキーとか見ると、抱きつきたくなるもん、俺。」
「あ、それわかる。私も、昔からあぁいうキャラぐるみ見ると、ついつい追いかけたくなっちゃう。」
「そうそう、そんな感じ。人が中に入ってるって知ってても、騒いじゃうよな、あれ。」
「うん。しかも、ディズニーランド内で、ミッキー一人しかいないんでしょ?」
「えっ!?嘘!俺、それ初耳。じゃ、あの広い中で、ミッキーに出会えるって、かなり幸運だったりするんだ。」
「そうだよ。だから、みんなミッキーに会えると、あんなにうれしがるんだね。ディズニーランドなんて、そうそう行けるものじゃないしね。」


くだらない話をしながら、歩いていく。
すると、結構な距離だったはずなのに、私にとっては、あっという間に、店についた。

店に入ると、割とたくさんのメニューが置いてあって、店内は、混んでいたわけでは無いけど、とても空いていたわけでもなかった。
でも、席にはすんなりと座れた。

二人で注文をしにいく。
二人とも、ハンバーガーと、ポテト、そしてドリンクのセットを、頼むことになった。
リョウは、やせているくせに大食いであって、全部大きめのサイズを頼む。
私は、そこまで小食なわけではないけれど、食べきれないと困るので、すべてスモールサイズにした。

注文して、商品が手にはいると、二人で、席に座って食べ始める。
食べ始めて、中間ぐらいのときに、リョウのケータイの着信音が、鳴った。
リョウが、ケータイを開く。


「あ、カズだ。」
「なんだって?」
「・・・・・鉢合わせ、しちゃったらしい。」
「うそ!?なんて書いてある?」
「これだけだけど、すべてを物語ってる。」


『_l ̄l○』


「あ。」
「わかるだろ?」
「・・・うん。ナナ、大丈夫かな。」
「カズが、うまくやってくれてるだろ。」


そんなことを、話していると。
もう一通、リョウのケータイに、メールが。


「あ、またカズ。」
「今度は?」
「・・・うまくいったみたいだわ。」


そう言って、私にケータイの画面を見せる。


『Hold on!!!!』


「・・・・何やってんだろ、あの人達。」
「さぁ?英語の意味からすると、『抱きしめる』だけど。」
「まさか、カズ、ナナにそんな大胆なこと・・・。」
「してる可能性大。」
「あー、ナナが心配だわ・・・。というか、抱きしめながら、いつ、どうやってこのメール打ったんだろう・・・。」


まぁ、とにかくうまくいってるみたいなので、二人のことはほっといて、食事を再開する。
すると、今度は私のケータイのメール受信音が、鳴る。


「あ、カナだ。・・・・。」
「・・・・俺見ても大丈夫?」
「・・・うん、リョウなら、たぶん。」


『なんか、いい感じになってきちゃったよ〜!!マジ、タク優しいし!手とか、ちょっと成り行きでつないじゃったりぃぃぃ!!ヤバイ!そっちはどう?リョウ君と、うまくいってる?』


「あ、カナちゃん、タクのこと好きなんだ?」
「うん。」
「じゃ、両想いじゃん、あいつら。」
「てことは、タクもカナのこと好きなんだね、やっぱり。」
「好きっていうか、チャンスはものに、って感じだな、あいつの場合。カナちゃんのことは、前々からかわいいって、言ってたけど。」
「ふーん・・・じゃ、タクって、本命作らないタイプなの?」
「ううん、あいつ本命アイ。」
「え!?」
「本当。」
「えーっ、うっそ。」
「だから、アイの取り合いになったんじゃん。」
「どーせならコイツ、ってレベルじゃないの?」
「ううん。全員マジ。」
「はぁー・・・。」


そんなこと、真顔で言わないでください。
全員マジ=リョウもマジ、って意味じゃないですか。
よく、普通にそんなこと言えるな。ちょっと、照れてるところがかわいいけど。

そして、カナにメールを返す。


『こっちも順調。カナがうまくいってるなら、よかったよ〜。てか、手つなぐとか、かなり脈アリじゃん?がんばって!その調子で!』


なんか、タクの本命が私だってわかってるのに、こんなメールを友達に送るなんて、ちょっと気がひける。
でも、リョウいわく、カナも脈アリにかわりないので、まぁいいかなと、その程度の意識で送った。

食事を食べ終わった後、店から出た。
まだ、合流時間まで、時間が四十分ちょっと余裕があったので、どれかアトラクションに乗ることになり、二人並んで歩きながら、どれがいいか決めていた。

と、そんなときに。


「すみませーん。」


何者かに、後ろから、声を掛けられた。リョウと一緒に、振り返ると。

そこには、こちらに満面の笑みを浮かべた、オーラが輝いている、女の人。
どこかでみたことあるような。
そして、その後ろには、テレビカメラらしき、大きなカメラを肩に持ち、こちらにレンズを向けている男の人が、二人。
その周りにも、たくさんの人たちがいる。

・・・・もしかして、これ。


「あの、○○テレビの、特別番組の収録中なんですけど、よかったら、インタビューに答えてくれませんか?」


愛想よく、その女の人は言う。

そうだ、間違いない、これは、俗に言う、テレビ番組のロケ。
ここは最近人気の行楽地とだけあって、テレビの取材が来ていたのだ。
この女の人はリポーターで、その後ろの男の人は、カメラマン、周りの人たちは、スタッフだ。
そして、私たちは、今、インタビューをされている。
カメラも、今、もうすでにまわっているようだ。

リョウも状況理解できたようで、こちらを見ていた。
そして、どうする?と聞いてきたので、私は、リョウが良ければ、と答えた。
すると、リョウは、リポーターに向かって、いいですよ、と言った。
そしてリポーターは、ありがとうございます、というと、私たちの横に並んで、質問を始める。


「早速質問なんですが、二人はどのくらいきあっているんですか?」


その質問に私はどきっとした。
あの、私たち、つき合ってないんですけど。
カップルでもないのに、こんな質問されてもなー、と、そのあとすぐ思った。
きっと、第三者から見れば、私たち二人は、十分カップルなのだ。

そして、リョウは苦笑いを浮かべて、答える。


「どのぐらいに見えますか?」


おいおい、それ、質問の答えになってないよ、リョウ。
質問し返してどうするんだ。
なぜか、初対面の人の前なのに、リョウは、優しいままのリョウであった。
表情が、柔らかかった。
質問し返されたにもかかわらず、リポーターは笑顔のまま答える。さすがプロだ。


「う〜ん、一年以上つき合ってるんじゃない?」
「じゃ、そういうことで。」


リョウはうまくスルー。
リポーターが、えぇー、それ、どういう意味?と、まくし立てていたが、次の質問へ、というカンペが出てたので、リポーターは進める。


「じゃ、彼女さんに聞きます。彼氏くんの好きなところは?」


好きなところ?そりゃ、簡単。
かっこいいし、最近わかったことだけど、優しくて、無邪気で、私の前だけでは自然体で・・・。



って、はぁ!?



答えられるわけないじゃん?
本人の前だよ?本人の前で?はぁ!?告白するようなものじゃない。
リョウを見てに助けを求めると、リョウは、ちらりとこちらを見て、そしてまた苦笑いした。
その笑顔が、適当に答えといていいよ、と言っているように感じたので、私は安心して答える。


「えーっと、優しいところ、ですね。」


私は、平然を装って言う。
これが一番無難な答えだと思ったので、この答えにしておいた。
本当に思っていることではあったけれども。
そして、リポーターはいい年して、きゃっきゃ言いながら答える。


「あー、彼氏くん、優しそうだもんねー!じゃ、彼氏くんに聞きます!彼女さんの好きなところは?」
「かわいいところとか、友達思いなところとか・・・っていうか、全部ですね。」


リョウは、迷わず、即答だった。
そのあと、リョウの頬が、ちょっと赤くなってたのが、私にはわかった。
もちろん、私も、茹でダコ。
顔、真っ赤になっているだろう。
顔全体が、熱くなっていったのが、わかった。
自分の好きなところを、好きな男に目の前で言われて、赤くならない人なんていない、絶対。
いたとしても、その人は相当ポーカーフェイスだろう。
いくら私が赤面症だからって、そんなことは一切関係ない、こればかりは。


「彼氏くん、かっこいいこといいますねー!彼女さん、顔真っ赤じゃないですか〜!で、この番組の趣旨なんですけど、出会ったカップルに質問して、その後、予告なしに、愛の誓いにキスをしてもらうって企画なんですねー!じゃ、どうぞ、してください!」
「はぁ!?!?!?!?!?」


キ、キ、キ、キ、キ、キス!?!?!?
ちょっと待って、キス、ってあのキス?唇と唇をこう・・・、ぎゃー!ちょっと待って、うちら、本当にカップルじゃないんだから、そんなこと、できるわけないじゃない!
聞いてない、そんなこと!
私が、パニクって、このインタビューを止めようとする。


「ちょっと待ってください!あの、そんなこと・・・。」
「あ、いいですよ、別に。」


すると、リョウが、私の声をさらっと遮る。
いいですよ、って、・・・・リョウ!?


「リョウ!?」
「おっ、ノリいいですね〜!彼氏くん!じゃ、運命の誓いのキスまで、5、4、・・・・・。」


リポーターが、カウントを始める。ちょっと待って、と言おうとした。
でも、そこでリョウが、私の耳元でささやく。


「大丈夫だよ。」


大丈夫って、何が・・・。
そう思って、目を伏せた瞬間。リョウが、私の両肩を優しくつかんで。アイ、って、私の名を呼んだ。
そして、名を呼ばれた私は、リョウの顔を見るために、上を向く。

周りの声なんか聞こえない。
カウントが、どこまで進んでいるのかもわからない。
あの告白のときと同じように、真正面にいるリョウの、きれいな目に縛られて、身動き一つとれない。
もしかしたら、息もしてないかもしれない。そんな中で。


リョウは、私の頬に、優しくキスをした。


「あれ?ほっぺにチューなんて、かわいいですね〜!!」


リポーターが、興奮して言う。
私は、ぽかんとしてて、でも、ちょっと安心してたりした。
いきなり本当の本当にキス、なんて、困る。さすがに。
ほっぺにチュー・・・?って感じで、しばらく呆然としていた。



そして、そのテレビ局のロケスタッフたちに、この番組のO.Aの日程や、全国放送らしいので、放映する際にいろいろな確認がいるらしく、その関連の説明をされてから、お礼にということで、園内で使える金券、二千円分もらった。
その説明のときに、わかったことなのだが、そのスタッフたちは、私たちのことを、高校生だと思いこんでいた。
もともとこの番組は、高校生を中心にした番組で、この、私たちが受けた、カップルに質問するというコーナーも、高校生カップルの実態調査、ということで、高校生に見えた私たちに質問してきたんだそう。
説明されていたときに、実際の年齢を聞かれて、私たちは、高校生を対象にしたインタビューだなんて、知るよしもないのだから、中学二年生だと、正直に答えた。
すると、スタッフ全員、驚きを隠せないようで、あのリポーターも、大人っぽいわね〜、と、感心していた。
でも、高校生でないといけない、ということではないそうなので、ちゃんと放送するそう。
こんなキャラがいた方が、バラエティに富んで、逆に良くて、視聴者を飽きさせない工夫になるのだそうだ。

リョウは、二千円分の金券が入った封筒をひらひらとふりながら、思いがけないお礼に、ラッキー、なんて言って、上機嫌だった。

スタッフたちと別れた後、私は照れて照れてしょうがなかった。
リョウは相変わらず、上機嫌で、あとのことなんか考えてもいない、きっと。

あの映像が放映されるのは、二週間後。
全国放送で、しかも、夏休み中のゴールデンタイムの特番。私とリョウの学校の生徒が、誰一人として、見ていないわけがない。
夏休み中だから、学校内で噂が広まる、ということはないが、夏休み明け、質問づくめに加えて、絶対、学年中の先生に呼び出しくらうだろう。

昼食を食べ終わってから、ミワたちとの合流時間まで、アトラクションにいくつか乗って時間をつぶそうとしていたのだが、撮影と、その説明を含めて、時間がもう、二十分近く経とうとしていた。
合流時間まで、あと二十分ほどしかないので、合流場所のゲームセンターで、時間をつぶしていようということになった。
ゲームセンター内に入って、さまざまな機会の中を、進んでいく。
周りは、薄暗くて、騒がしい機械的なテクノ音で包まれている。


「あ〜ぁ・・・・。」


私が、暗くため息をつくと、リョウは、心配そうに言った。


「そんなにいやだった?チュー。」
「いや、チューはいやじゃなかったけど・・・って、え!?」


しまった。ついつい本音が出てしまった。その言葉を聞いて、リョウは、微笑を浮かべ、言う。


「あ、いやじゃなかったんだ?」
「え、あ、っと、なんて言うか。」
「アイ、珍しくテンパってる。」
「・・・う〜・・・。」
「いやじゃなかったなら、いいじゃん?」
「そういうんじゃなくて、あとのこと考えると、学校とかで、大変そうじゃない?全国放送だよ?絶対、誰か見てるって。先生に呼び出しされるだろうし、学校中で噂になるよ。」
「あ、そっか!確かに大変そうだな。でも、いいじゃん、別に。」
「・・・いいの?」
「呼び出しされたって、二人一緒だし?」
「・・・そういう問題?」
「タクやケンたちに、自慢できるし?」
「あっ、そうだよ、あの放送、ミワが見てたら絶対質問攻め!」
「一緒に受けよう、その質問。」
「あぁ〜・・・もう、リョウってば・・・。」


私が、肩を落としていると、リョウは、私の腕を掴み、私を引っ張って、ずかずかと歩き出す。
私はその行動にただただ戸惑い、手を引っ張られながら、リョウ!?と声をあげる。
でも、リョウは無反応で、そのままずかずかと進む。
そして、大きなゲーム機械の、他の客からは見えない死角になっている物陰に、強引に連れ込まれた。
リョウは、物陰で立ち止まると、私と向き合う形になって、しばらく私と目が合わせ、腕は掴んだままだった。

私は、この、リョウの思いがけない行動に、びっくりしながらも、胸をどきどきさせて。
この行動を、冗談で、流してしまう言葉が、見つからなかった。

リョウは、神妙な面もちで聞く。


「ねぇ、アイ。」
「・・ん?」
「さっきの、チュー、本当にいやじゃなかった?」
「・・・・。」
「・・・いやだったの?」


私はうつむき、黙っていた。
なんて答えたらいいかわからない。
いやだったわけではない。でも。正直に答えて、いいのだろうか。
正直に答えたら、私が、リョウのことが好き、ということになってしまう。


リョウは、私のことを好きだと言ってくれた。
私を、支えてくれてる。楽しませてくれてる。
手を、つないだ。頬に、キスした。


信じていいの?


「俺と、カップルだと思われるの、いやだった?」


リョウは、なおも、心配そうに、聞く。
その質問に、私は、静かに横に首を振った。


「・・・え?」
「・・・・。」
「いやじゃなかった・・・・の?」
「・・・うん。」


私は、下を向いたまま、照れまくって、照れまくって。
リョウは、私の腕を掴んでいた手で、今度は私の手を包むように握って、また聞く。


「じゃ、俺のこと、どう思ってる?」
「・・・・。」
「俺、ずっと、考えてた。この一週間。」
「・・・・。」
「アイは、俺のこと、どう思ってるのかな、って。」
「・・・・。」
「いやじゃなかった、ってことは・・・・俺、そう考えちゃっていいの?」
「・・・うん。」


照れまくって、照れまくって。
この恋の、可能性を、信じたくなって。


こんなの、嘘かもしれない。
私を好き、だなんて、嘘かもしれない。
ケンや、タクや、カズが私のこと好きだなんてことだって、嘘かもしれない。
すべて、すべて、嘘かもしれない。


リョウの、思わせぶり劇場が、まだ続いてるんじゃない?

私を、騙して、おもしろがってるんじゃない?

遊ぼうとしてるんじゃない?


すべて、すべて、すべて。

嘘かもしれないよ?


「アイ。」
「・・・ん?」
「ちゃんと、言ってほしい。」 「何を?」
「俺のこと、好きって、言って?」
「・・・え。」
「言って。」
「・・・・好きです。」


そう、聞こえるか聞こえないかぐらいの声で、うつむいたまま、つぶやく。
絶対、Sだ、この人。


「俺の目見て言ってよ〜。」
「もう、注文多いな!」
「いいじゃん、俺、かなり好き好き言ったし。どのくらい、照れるか、アイにもわかってもらわないと。」
「・・・もう。」


私は、ふう、と一息ついて、(きっと)真っ赤な顔を上げて、リョウの顔を見る。
そうやってから気付いた、リョウも、かなり照れている。
私は、注文通り、リョウの瞳を見つめて。


「好き。」


それだけ言った。
すると、リョウは、微笑を浮かべて、優しく握っていた私の手を、強く握り返す。
それまで、包み込むように握っていたが、軽く、指を絡ませるようにして。
私も、優しく握り返した。



神さま。

これは、嘘ですか?

夢ですか?


本当ですか?

信じても、いいですか?



そっと、私の唇に、リョウの唇が触れる。

唇を離してから、リョウは、照れつつも、私の瞳から視線を外さず。


「おつきあい成立?」
「やだ。ちゃんと言って。」
「・・・・アイ、俺とつき合ってください。」
「・・・よろしく。」


そして、もう一度、キスをして。




ごめんなさい、神さま。
いくら、あなたが、これが嘘だと言っても。
思わせぶり劇場だと言っても。



私は、リョウの愛を、信じてしまいそうです。







14 years old NO.9へ続く








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