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それから、弘樹と俺の練習は始まった。
まだ、二人だけのバンドだったが、ギターとベースさえあれば、十分曲の伴奏にはなった。弘樹は俺が思っていた以上に実力があって、きっとそこらのアマチュアの中でも特別うまい方だろう。
弘樹も、俺のベースをうまいとほめてくれた。
弘樹とは演奏の相性がすごくよかった。
練習するたび、改めて、こいつと組んでよかったな、と思っていた。
そして、それと同時に、メンバー探しの日々も始まった。
ドラム、そしてボーカル。
ボーカルは簡単に見つかるだろうけど、ドラムは難しいだろうな、そう笑い合って、ゆっくり見つけていくことにした。
でも。
俺らがバンドを組んで二週間ほど経ったころ。
バンドを組んでからというもの、俺と弘樹は教室でも一緒にいるようになって、昼休み、二人で相変わらず音楽の話をしていた。
そんな俺らに。
「おいーっす。」
そう話しかけてきたのは、これまた同じクラスの男子、田沼晴彦。
高校入学したとき、席が近くて、このクラスで一番最初に話したヤツだ。
軽いノリで、男子にも女子にも人気のある、このクラスのムードメーカーとなりつつある。
晴彦「あのさぁ、お前ら、最近やけに仲良くねぇ?しかも急激に。もしかして、お前ら、男趣味だったりすr 弘樹「ありえないだろそれは。」
田沼の言葉に、弘樹がつっこむ。
あぁ、確かに周りから見ると、そんな風にも見えるかもな。
クラスの連中にバンド組んでること言ってないし。
といかメンバーが二人の時点でバンドって、言いにくいだろ、そりゃ。
晴彦「なんだよー、俺一人で心配してたじゃんか。」
弘樹「いらぬ心配するなよ。」
晴彦「すまん、すまん。なんか、共通の趣味見つけでもしたのか?お前ら。」
晴彦の言葉を聞いて、俺と弘樹は顔を見合わせた。
弘樹「言っちゃってもいいよな、別に。」
浩介「俺は別にかまわねーよ。」
そんな会話を交わしてから。
弘樹が、
「俺ら、バンド組んでるんだ。」
それだけ言った。
すると、その弘樹の言葉に反応したのか、それまでへらっとした笑顔だった田沼の顔つきが変わった。
真剣なまなざしに、きゅっとしまった唇。
田沼の真顔、初めて見た気がする。
どうしたんだろう、俺たちがバンドを組んでるってことが、そんなに意外だったのか?
でも、それで真剣な顔つきになるのはおかしい。
夢ばっか見てバカなことやってるって・・・軽蔑されたか?
浩介「・・・どうしたんだよ?」
晴彦「あ、いや、なんていうか。」
俺の問いかけに、真顔だった田沼は、いつもの笑顔に戻った。
弘樹を見ると、怪訝そうな顔をしている。
晴彦「あのさ、パートは?お前ら何やってんの?」
動揺を隠したような様子で、田沼は軽く装って聞いてきた。
完全警戒しきっている弘樹の代わりに、俺は答えた。
浩介「俺がベースで、弘樹がギター。」
晴彦「へぇ・・・、ドラムは?誰やってんの?」
浩介「いや、ドラムとボーカルは探してるんだ。」
俺の言葉に、また、田沼はあの真顔をした。
どうしたんだ?コイツ。
弘樹が、我慢が利かなくなったような様子で、田沼に絡む。
弘樹「何言いたいんだよ、田沼。」
晴彦「・・・俺、ドラムやってるんだけどさ。」
弘樹・浩介「!!」
やっとわかったぞ!
そういうことだったのか。
だから、あんなにも「バンド」という言葉に反応したんだ。
弘樹「まじで!?」
弘樹が、さっきの顔とはうってかわって、明るくうれしそうな顔をした。
・・・・ここ二週間、弘樹と一緒にいて思ったんだけど、こいつ、結構顔に出る。
晴彦「うん。中学2年のときに始めたんだ。で、バンド組みたいな〜とか、思ってた。」浩介「入れよ!俺らのバンド!」
弘樹「てか、入って!」
大丈夫だ、コイツなら。
そう、弘樹も思ったらしい。
普通、バンドを組むときに、メンバーの性格や目指す音楽を気にしなきゃいけないのだが、あの「バンド」とい言葉を聞いたときの田沼の目は、真剣そのものだった。
俺は、同じ匂いを感じた、あのまなざしに。
きっと、弘樹も感じたはずだ。
晴彦「リスペクトしてるの、何?」
弘樹・浩介「ロック!」
晴彦「X JAPANとか、ジュディマリ好き?」
弘樹「大好き!浩介もそうだよ!」
晴彦「おっしゃ、見つかった!同志!よろしく!」
浩介「よろしくな、・・・晴彦。」
弘樹「よろしく、晴彦。」
晴彦「・・・・おう、浩介、弘樹!」
俺たちは、堅く、堅く握手を交わした。
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