そばかす





7,



藍子がメンバーに加わってから、二週間がたつ。
相変わらず、田沼家の地下室で、全員で練習。
藍子は、高い音程の歌だけじゃなくて、男性歌手の歌なども自分なりのアレンジを加えて歌い上げる。
高くも、低くも、透き通って、響き渡る声だった。
全員で合わせられる曲のレパートリーも増えて、バンドとしてだんだん形ができてきた。そして、バンドができあがってから、また急浮上した、問題点。


藍子「バンド名、ねぇ・・・。」


そう、バンド名だ。
一応決めておきたい、そう言い出したのは晴彦で、今、練習の合間に、そのことについて話し合っているのである。
バンド名。まぁ途中で気に入らなくて変えようと思えば変えられるし、ノリで決めてしまってもいいんだけど、どうやらこのバンドのメンバーはそんなつもりはさらさらないらしい。
今決めた名前を、ずっと使っていく。
俺もそっちの方がいいけどさ。


藍子「どうやって決めよう?」
晴彦「んー・・・話し合いで決まる・・・もんか?」
浩介「・・・決まりにくいんじゃ?」
弘樹「そうだよなー。・・・じゃ、ここは平等に、簡潔に・・・。」
弘樹以外「?」
弘樹「あみだで決めよう!」
弘樹以外「はぁ!?」


そんなこんなで始まった俺らのバンドの命名式。
弘樹の提案で、それぞれ、つけたい名前を紙に書き、あみだくじで決める。
決まったもんは文句言い合いなし。
というまぁ半ばノリの命名式。


少しの間それぞれ考えた後、紙が回され、自分がつけたい名前を書いていく。
俺は、「clumsy」という英単語を書いた。
意味は「不器用」。
「クラムシー」っていう響きがいいからって理由で、特にこれにした意味はないんだけど。
俺が最後に紙に書き込んだから、他のメンバーが書いたものを見れた。
「DOLCE」「blow up」「thamos」・・・。
全部英語・・・か?


浩介「え、これって意味聞いても良いの?」
晴彦「別にかまわねぇよ。」
浩介「じゃ、この・・・なんて読むんだ?ドル・・?」
藍子「あ、それ私!『ドルチェ』って読むの。イタリア語で甘いって意味。」
浩介「へー・・・。なんかいい響き。『blow up』は?」
晴彦「あ、それ俺!爆発って意味。」
藍子「私と全く反対じゃん!」


そう言って、晴彦と藍子は二人で笑い合った。


浩介「じゃ・・・最後のは。」
弘樹「俺俺〜。魔法瓶って意味。」
浩介「へー。なんかいろんなもん詰まってそうな・・・。」
弘樹「だろ?浩介のは?」
浩介「俺は、不器用って意味。」


そう俺が言い終わった瞬間、俺以外のメンバーは一斉に笑いだした。
え?
何がおかしいんだ?


浩介「え、何?」
藍子「いや・・・浩介らしいなって。」
浩介「?」
晴彦「お前全く自分のことじゃんか。」
弘樹「響きはいいけどな、はっきり言ってお前以外不器用じゃねぇぞこのバンド。」
浩介「俺そんな不器用?」
藍子「不器用の代名詞。」
晴彦「勢いにまかせないと何もできない感じだな。」


くそー・・・俺以外のメンバー大爆笑してる。
なんか言い分も合ってる気がするけど。


弘樹「じゃ、早速あみだいきまーす・・・。」


藍子の、あみだっくじぃ〜♪というベタすぎる、でも藍子の並はずれた歌唱力のおかげで良い歌に聞こえるあみだくじの歌に合わせながら、弘樹の指が紙の上の線をつたっていく。
そして。


弘樹「あ。」
藍子「あー。」
晴彦「あーぁ。」


俺より先に紙をのぞき込んだ三人が、『あ』しか使わない感想を口々に言っていく。


浩介「?何に決まったの?」
藍子「おめでとう不器用君当選だよ。」
浩介「え!?」


弘樹の指の先には、俺の下手な字。


晴彦「ってことで、このバンド名は『Clumsy』に決定でーす。」


そんなこんなで。
俺たちのバンド名は、『Clumsy』に決定。
よかったのか?


藍子「まぁ響きいいし。」
晴彦「そうだな。」
弘樹「ライブの時トークのネタになりそうだな。」


よかったらしい。






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